第183話 独り相撲⑥
5-0でノーアウト満塁という局面から試合は再開される。良い当たりのヒットが1本でも出れば2塁ランナーがかえって来てコールド負けとなる局面。
そうでなくても残る7回表の攻撃だけで5点を取り返すのは容易ではないのだから、なんとしても凄美恋には抑えて欲しかった。
だけど、凄美恋は1番打者の木田優子に打ちゴロのど真ん中を投じた。明らかな失投。ど真ん中に投げられた絶好球はあっさりと痛打される。外野の頭を越えて長打になりそうな大きなフライがライトを守っている由里香の方向に飛んでいく。
だが、由里香はこちらに背を向け、軽快にフェンスの方に走りながら腕を伸ばす。前のめりに倒れこみ、地面に体を打ち付けながらも、ボールはグラブの中に納まっていた。
由里香のファインプレーにより、ライトフライでようやくこの回1つ目のアウトを取ることができた。
大きなフライだったので、タッチアップで3塁ランナーはホームにかえってきて、1点を追加され6点差にはなったが、タイムリーで二者生還という最悪のシナリオは避けることができた。
由里香は思い切り体を打ち付けたのに、すぐに起き上がってセカンドの真希にボールを返し、3塁ランナー以外は進塁できなかったのだからむしろ助かったと言えるかもしれない。1,2塁にいたランナーは動けずにそのままになっている。
そして由里香のファインプレーのおかげで1アウトを取れて落ち着いたのか、続く2番の吉川光にはきっちりコーナーを攻めた良い球を投げて3塁方向にふんわりとしたフライを打たせた。華菜が捕球してこれで2アウト。
富瀬の言う通り凄美恋の球はとにかくストライクゾーンにさえ投げればなんとかなるのかもしれない。打たれて負けろという指示のおかげで緊張が和らいだのか、すっかり無駄な力も抜けている。
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