第118話 ようこそ桜風学園野球部へ!②
華菜は部室内に貼ってあるカレンダーに視線を移した。日付はすでに6月17日。女子硬式野球の連盟に登録しないといけない締め切り日の6月20日はもう目前に迫っている。
「とにかく人数が揃ったので、連盟に早く連絡しないと夏の大会出られなくなっちゃいます! 私、今から急いで富瀬先生を探して――」
「華菜さん、そう慌てないでくださいな。もうすでに登録の申請は済ませておりますわ」
怜がスマホの高校女子硬式野球連盟のサイトの加盟校の欄を見せる。部員みんなでスマホを囲むようにして見入ると、そこにはしっかりと“桜風学園硬式野球部”の名前が載っていた。
「ほんとですね。いつの間に登録してたんですか? 生徒会長が野球部に入るなんて今初めて知りましたけど……?」
「まあいいじゃありませんの。9人揃ってきちんと大会の参加資格を得ることができましたのですから」
怜が桜子と視線を合わせて意味ありげに微笑み合っていた。
華菜は2人の交わした視線の事情はよくわからないが、いずれにしてもこれでついにスタート地点に立てたのだ。それをようやく実感した。
「本当に9人揃ったんですね……」
華菜は大きなため息をついて床にペタンと座り込んだ。なんだか安堵で力が抜けてしまう。
「でもここがゴールじゃなくてスタートなんだから、まだまだ安心している場合じゃないよ」
美乃梨が気を引き締める。
「ボクたちは野球部を作ったのがゴールじゃないんだ。ここから頑張って勝てるチームにしていかないといけないよ」
「当たり前やん! せっかく奇跡的に高校でも野球続けられることになったんや! うちは絶対優勝旗をここに持って帰ってくるんやから!」
美乃梨に続いて
「これから頑張って練習しないとねー。とくに私とお姉ちゃんはみんなよりも経験が浅いんだから、ビシビシ鍛えてもらわないとねー」
「えぇ……あんまりきついのは嫌なんだけど……」
咲希の言葉に横から真希が小声で横やりを入れた。
「せっかく9人揃ったし、私も座り込んでる場合じゃないわね!」
「華菜ちゃん、今日から改めてよろしくね!」
そう言って千早が華菜に手を差し出し、華菜が立ち上がるのを手伝った。
「よし! 全国優勝するぞー!」
華菜の元気な声が旧第2校舎の野球部部室内に響き渡った。
第5章 バッテリーを探して 終
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