第58話 野球部誕生!②

「華菜キャプテンの女子高校野球講座、というところですわね」


「茶化さないでくださいよ!」


華菜が照れている横で千早と咲希が小さく拍手をしていた。華菜は小さく咳払いをして、気を取り直して説明を始める。


「まず、私たちにとってのメインの大会は、年に2回、春と夏に開催される全国大会になります。昔は夏の大会のすぐ後に秋の全国大会もあったんですけど、女子野球人口の増加により、高校野球の加盟校が増えて、1つの大会にかかる日程が延びたので、今は廃止になりました。昔は参加校が少なかったから、予選無しで全国大会に出場できてたんですけど、今は地方予選にも時間を割かないといけないですからね」


「ふむふむ」


横で千早がノートを取り出した。


「で、1番近い大会が夏なんですけど、県の代表1枠を争うトーナメント戦が7月10日から始まります。昨年の時点では、岡山県内の参加校は22校でした。男子の方に比べればかなり少ない数にはなりますが、それでも昔は県内の女子野球部は岡山文学館高校にしかなかったので、そのころに比べればかなり増えました」


「22校だけなら、なんとかなりそうですわね」


「甘いよ、れーちゃん。うちの県には全国でも強豪の星空学園とか、華菜ちゃんの説明してくれた名門の岡山文学館があるから、そこらへんを倒してとなるとかなり大変だよ」


「あら、そうなんですの?」


「まあでもそもそも予選に参加するには6月20日までに、うちの学校も連盟加盟の申請をしないといけないですけどね」


「あと1ヶ月半くらいだねー」


「期間は正直短いですけど、まさか4月中に5人揃えて公認の部活にできるとは思わなかったです。本当にみんな入ってくれてありがとう」


華菜が頭を下げた。


「まだ感謝されるには早いですわ。当然その大会に出るには9人揃えないといけないのですわよね?」


「そうです。なので私たちはこの6月20日までに残り4人集める必要があります」


「4人かー。結構大変そうだねー」


「とりあえず話は4人集めてからになりますが、県大会を勝ち抜いて優勝したら、全国大会に出場できます。その全国大会が兵庫県の丹波市で、今年は7月30日から始まりますね」


「あら、随分と早いですのね。夏の甲子園ってもっと8月の半ばのイメージでしたわ」


「男子の方はそうだね。ボクたち女子硬式野球の大会は男子よりも、少し早い時期にやるんだよ。場所も規模も違うからテレビで見てる甲子園大会とはちょっとイメージが違うかもしれないよ」


怜の疑問には美乃梨が答えてくれた。


「夏の大会についての説明はそんな感じです」


華菜の説明にひと段落着き、横で千早が音が出ないように拍手をする。


「夏の大会が終わったら少し休んで、9月下旬になったら今度は秋の県大会が始まります。この県大会で上位3位までに入ったら、次は中国地方の地区大会に進めます。中国地区の大会は各県の加盟校数に合わせて、広島が4校、岡山山口が3校ずつ、鳥取島根が2校ずつで計14校のトーナメントで争います。そしてこのトーナメントの結果を踏まえて、中国四国で合わせて5校が選抜されて、埼玉県の加須市で開かれる、春の全国大会に出場できるというわけです。夏みたいに1度負けたら終わりではなく、中国地区大会まで出れば、準優勝やベスト4の高校にもチャンスはあります」


「春の選抜大会の出場校争いについては男子の方とほとんど同じと考えて大丈夫だけど、少し違う点は21世紀枠がないことだよね、華菜ちゃん」


「あ、そうです。男子の方の甲子園大会だと21世紀枠と明治神宮大会枠っていうのがあるんですけど、女子の方は大会加盟校の数が少ないのでその代わりに、3年前くらいから、特別枠として、全国のあと一歩で本大会に届かなかった学校の中から4校推薦される形式が取られるようになりました」


「男子の方の21世紀枠と明治神宮大会枠の代わりに、惜しくも全国大会に届かなかった学校が敗者復活で4校選ばれると思ったらいいよ」


「男子の方のシステムもよくわからないけどねー」


「そこはまあネットとかで調べてもらったら」


「はーい」


「この春と夏、年2回の全国大会が私たちが目標の中心に据える舞台になります」


美乃梨が横から説明の補足をしてくれたおかげで、スムーズに説明を進めていくことができた。

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