第38話 対決に向けて②

「れーちゃんは中学時代にエースとしてバレーボールで全国ベスト16まで行ってるんだよね」


「「ええっ!?」」


サラッと美乃梨の口から出て来た予想の数段階上の情報に、華菜と千早2人とも驚きの声をあげた。独特のオーラと自信をまとっているとは思っていたが、そこまで実績のある人だとは思わなかった。


「春原先輩って凄い人なんですね!」


千早が目を丸くして驚いている。


「でもなんでまた、うちの学校に進学したんですかね?」


それだけ凄い腕前ならばわざわざバレーボール部のないうちの学校に進学するよりも、もっとスポーツに力を入れている学校に行った方がいいのではないだろうか。由里香といい怜といい、どうしてもっと自分の才能を大事にしないのか、と華菜は不思議に思う。


「ゆくゆくは親の仕事を継ぐことになるからうちの学校でしっかり勉強して良い大学に進学してほしいって親から言われてるんだってさ。まあ、その割に彼女全然授業にも出てないけど」


「春原先輩の親って会社の経営者とかなんですか?」


「うーん、まあそんなとこかな」


「そうなんですね」


美乃梨がお茶を濁したようにも感じられたが、とりあえず華菜は納得して頷いた。


「まあバレー経験者といっても必要以上に恐れて萎縮しすぎるのもよくないよ。あくまでも野球は初心者なんだから」


「あ、千早も初心者です……」


千早が遠慮がちに手を挙げながら発言する。千早も運動神経が良いから、きっと無難にこなしてくれるとは思うけど、初心者には変わりない。


「じゃあ結局、華菜ちゃんに勝負のすべてがかかってるってわけか」


「そんなプレッシャーかけないでくださいよ」


「まあすべてっていうのは言い過ぎにしても、実際千早ちゃんのこと、華菜ちゃんが引っ張っていってあげないといけないよ」


「それはわかってますよ。そのために作戦を練ろうと思って千早とここに来てたんですから」


「“打倒春原先輩大作戦”です!」


美乃梨にプレッシャーをかけられていたところに千早が元気よく割り込んでくる。相変わらず変な作戦名を楽しそうに命名していた。



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