第31話 綺麗な花には毒がある?①
4月の下旬になると随分暖かくなっていて、屋上に出るとポカポカしていて気持ちが良い。
美乃梨を先頭に3人で屋上に出ると、やはり昨日と同じくテラス席で一人紅茶を嗜んでいる怜の姿があった。今日は人見知り対策にドッグ仮面のお面をつけているので、千早も堂々としている。
美乃梨が手を振って怜の方へ歩いていくので、華菜と千早も後についていく。
「やっほー、れーちゃん。久しぶりー」
美乃梨が気さくに話しかける。
「美乃梨さんたら昨日会ったばかりなのにおかしなことを言いますのね」
怜は手で口元を隠して笑った。2人の間にはすでに十分な信頼関係が出来ているような雰囲気が漂っている。
昨日と同じく優雅に紅茶を飲んでいる怜を見ると、花に例えると芍薬とか牡丹とか百合とかが連想されそうなものなのに、なぜかわからないが頭の中では小学生の頃の校外学習に行ったとき、山でトリカブトの花を見つけた時のことを思い出した。
その花は薄紫色をしていてお淑やかにひっそりと咲いていた。可愛らしかったので取って帰ろうとしたら、近くにいた先生にもの凄い形相で怒られた。
後からトリカブトには強い毒性があると知った。綺麗な植物でただそこに咲いているのを見ているだけなら何も問題は無いが、こちら側から摂取してしまうと死に至る。その話を知ってゾッとした記憶がある。
なぜか怜と接してみてそのときの記憶がフラッシュバックした。理由はわからないが直感的に記憶が結びついたのである。
なんだか不安になり、チラリと怜の方を見ると気品のある微笑みを返される。その笑みはやはり無害そうで、むしろ癒し効果でもありそうな、体に良さそうなものに思えた。
トリカブトと一緒にしてしまったことが恥ずかしくて、申し訳なくなり、華菜は慌てて目を逸らした。こんなに穏やかそうな先輩を見てどうしてそんな感覚になったのか、華菜は首を傾げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます