第37話 化け物
リアが生まれるとすぐ、クリスの態度は一変した。一緒にいてもイライラするばかりで子育てを一緒にしてくれる様子もない。帰りもだんだんと遅くなり、帰って来なくなる日も多くなった。ある日ティアナがまだ赤ん坊のリアを抱いて買い物に行くと、クリスを見かけたので悪いとは思いつつも跡をつけた。クリスはとある店の中に入って行った。しばらくすると女性と腕を組んで出てきたではないか。ティアナは落胆した。子どもがまだ生まれたばかりだというのにあの人は他の女の人と遊んでいたのだ。クリスはそんな不誠実な人ではなかったはずなのにどうして。ティアナはリアを育てながらクラスを待った。ずっと待っていた。3ヶ月後。ようやくクリスが帰ってきた。
「おお、ティアナ久しぶりだな。騎士団の仕事でしばらく帰れなかったんだ。悪いことをしたな」
「おかえりなさい。そう、仕事だったの」
「そうなんだ。また、魔物たちが町の周りに増えてきたから討伐して回っていたんだ」
「でも私見たわよ。あなたと女の人が歩いているのを」
一瞬クラスの顔がひきつる。
「何を馬鹿なこと言っているんだ。そんなわけないだろ? リアだって生まれたばかりだ」
「正直に言って! あなた最近変よ? 家にも帰ってこないし、リアの相手もしてやらないで……」
「うるせぇええ!」
クリスがすごい声で怒鳴った。
「俺が何しようと勝手だろ? なんたって騎士団長様なんだからな。お前に指図される筋合いはねぇんだよ!」
クラスのあまりの大声にリアは泣き出してしまう。
「うるせぇなぁ! このガキ!」
クリスはリアに殴りかかる。
ドゴッ
「うぅ……」
クリスの拳はティアナの背中を直撃。ティアナがリアを庇ったのだ。
「どうして! どうしてそんな酷いことを」
「うるせぇ!」
クリスは何発もティアナを殴り、最後には思いっきり蹴り付けた。ティアナの顔は腫れ、右足は折れているようだ。
「あーあ、こんなとこ帰ってくるんじゃなかった」
そう捨て台詞を吐いてクリスは家を出て行き、2度と戻ってくることはなかった。その後ティナは足を悪くして働くこともできず、ショックで毎日泣き続けていたという。しかしこのままではいけないと足が悪くてもできる仕事を見つけ、なんとかリアが
大きくなるまで食い繋いだ。そしてリアはティアナの気持ちが落ち込むとよく泣きながらこの話を聞かされたのだという。そして最後にいつも必ず
「あなたにはお父さんはいない。あれは父親なんかじゃなく化け物だったんだ」
と言っていたのだった。
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