第24話 少女

 レオとカイは追いかけていた。ボロボロのマントを羽織った人影を。背丈からして子どものようだがとても足が速く、なかなか距離が縮まらない。


「レオ、どうして追いかけてるんだ?」


「僕にもわからないけどそうした方がいい気がして。本当にわからないんだ。ただの勘だよ」


「よくわからんけど、あいつをとっ捕まえればいいんだな? 先行くぞレオ!」


そう言うより速くカイはギアを一段階上げて走り出した。


「カイ! 乱暴しちゃダメだよ!」


カイに聞こえたかどうかはわからない。少し不安に思いながらもレオは必死に後を追った。

 

 その子どものような人影はこの街をよく知っているようで狭い路地を迷いなく走り抜けていく。カイはもう少しで追いつきそうというときにふいっとかわされてしまうのでイライラしてきていた。


「こんのぉ! 止まりやがれ!」


 カイはその脚力で7メートルほど飛んだ。そしてついにその人影を捕まえることができた。


「痛いっ」


そのマントの子は痛みを訴えた。声からすると女の子のようだ。


「悪い悪い。あんまり捕まらねぇもんでつい夢中になっちまった」


「何すんのよ!」


「俺のダチがお前が気になるって言うんで捕まえさせてもらった」


「何も捕まえなくてもいいじゃない」


「だから悪いって言ったじゃねぇか。話が通じねぇやつだな」


とても険悪な空気が流れている中レオがやっと追いついた。


「あ! やっと見つけた。速すぎだよ。このセリフ前もあった気がする」


「お! きたかレオ」


「あなたがコイツのお友達?」


少女はボロボロの服には似合わず赤い髪に綺麗な顔立ちをしていて、まるでどこかのお姫様のようだった。もうすでにカイが不機嫌にさせてしまったらしく、眉間に皺が寄っている。


「うちのカイが何かやっちゃいましたか?」


「おいレオ! なんで俺がやっちゃった前提なんだよ」


「この人は話がわかりそうね。コイツはあたしに飛びついてきて、ずっとイライラしてるのよ。もう失礼ったらないわ」


「ごめんよ。悪気はないんだ。許してやってね」


「コイツ次第ね」


「フン!許してもらわなくたっていいやい」


そう言うとカイはヘソを曲げてしまった。それを横目にレオは本題に入ることにした。


「君は僕たちのことを木陰に隠れて見ていたよね? 一体どうしてなんだい?」


「ああ、そのことね」


少女は静かにとても冷たい声で答えた。


「殺したい奴がいたからよ」


と....


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