Dear Dandelion,
響也
第1話 はじまり
青い空。一面に広がるタンポポ
「ああ、なんて美しいんだ」
君はその言葉を最後に力尽きた....
君は、優しい父さんと母さんのもとで裕福とはいかないが、それなりの暮らしをしていた。君たちの家は森の中にあり、父さんは森で伐採した木を町へ売りにいく、謂わゆるきこりをしていた。父さんは陽気で、パイプを燻らせながらいつも君を笑わせようとしてくる。木を切り倒しているために腕や脚は太く、胸筋はまるで彫刻のように整っていて厚い。
母さんは怒ると怖いが、普段は穏やかでとても優しい。母が編んでくれたセーターは丈夫でとでも暖かい。その朝はとても冷え込んでいたのでセーターをタンスから引っ張り出してきたところだった。
そして君は鼻筋がスッと通っていて目は大きく、いかにも利発そうな少年。そして髪の毛は黄金色に輝いていて、つい最近12歳になったばかりだ。
「今朝は冷えるな母さん」
震えながら父さんが寝室から降りてきた。
「あら、おはようございます。スープあたためておきましたよ」
「おお、それは助かる」
そう言いながら父さんは暖炉でその大きな体を温めていた。
「あら、レオも起きてきてたのね。おはよう」
そう、君はレオと言う名前だったね。
「おはよう母さん」
そう言ってレオはスープを受け取り父さんと一緒に朝食を済ませた。
朝食を済ませるとレオは父さんと一緒に木こりの仕事をしに行く。と言ってもレオは父さんが切り倒した木の枝を取ったり、昼食の用意をしたりと、父さんの身の回りの雑用をしていた。
遅めの昼食を取って2時間ほどしたころ、父さんがレオを大声で呼んだ。
「おーいレオ」
「何? 父さん」
「水を飲みたいんだけど飲み干しちまってよ。湖で汲んできてくれるか? 寒いとはいえ動くと暑くてなぁ」
「わかったよ父さん」
レオは早く父さんの喉を潤さなければと駆け足で湖に向かった。
作業している場所から歩いて3分位のところに湖はあった。少し日が傾いてきている。湖に着くと水鳥たちが水浴びをしていた。水筒に水を汲む。そして、急いでまたもと来た道を戻ろうと湖を背にすると後ろから
「ここにいてはいけない」
そう聞こえたような気がした。振り返っても誰もいない。空耳かな?両手で頬をパチンと叩き気合を入れて走り出す。
「父さん汲んできたよ」
息を切らせながら作業場に駆け込む。
しかし、父さんの姿はない
きっと家に忘れ物でも取りに行ったんだ。なーんだ、家に帰るなら水を汲んで来なくてもよかったじゃないか。そう思いながらしばらく父さんを待つことにした。家からここまでは往復で20分くらいである。しかし1時間経っても帰ってこない。さすがに遅すぎる。一度家に戻ろう。レオは走った。もう日が落ちかけている。気がつけば厚い雲が夕空を覆い隠すように広がりつつある。レオは胸騒ぎがした。今まで父さんがレオを1人で森に置いていくことはなかった。それに加えてあの声だ。
「ここにいてはいけない」
どうしても耳に残る。そして、どこかで聞いたことがある声だ。しばらく走ってようやく家がある開けた場所まで来た。
しかし、レオはそこで信じ難い光景を目にする‥‥
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