猫神様の覗き見
上上下下
プロローグ
黒猫神社。小高い坂の上にあるその場所に久しぶりの参拝客が現れたのは、ある夏の朝方のことでした。
最初に鳥居をくぐったのは、一組の兄妹です。
大学生らしい兄と高校の制服に身を包んだ妹はその年にしては珍しく参拝のマナーを気にかけるようで、鳥居をくぐる前に会釈をし、手水を取り、参道の端を通って賽銭箱の前に立ち、賽銭を入れて二礼二拍手。真剣な願い事があったのかそれなりの時間手を合わせ、最後に一礼。二人とも仲良さげにお互いの願いを話す話さないと会話をしつつ、鳥居をくぐる前に社殿に一礼。笑いながら坂道を下っていきました。
次に訪れたのは、その日の昼下がり。一人の女性が鳥居をくぐりました。
散歩の途中に普段立ち寄らない場所に寄ってみたようで、なにをするでもなく見回ります。そして、奥に賽銭箱があることを確認し、ジーンズのポケットから小銭を取り出して放り入れ手を合わせました。特に願うこともなかったらしく、その手はすぐに下げされ女性はその場を去りました。
その日の最後の参拝客は、買い物袋を持った姉妹です。
もうすぐ日も落ちようかという時間帯に、二人は鳥居をくぐりました。休憩として立ち寄ったようで、親のお使いなのか調味料がいくつか入ったその袋からアイスを取り出し、食べ始めました。涼みながらのんびり食べる姉とは対照的に、妹は急いで食べきってしまいました。
手持ちぶさたに境内を歩き回っていると奥の方におかれた賽銭箱と鈴に繋がった麻縄を見つけたようで、姉に小銭をねだり始めます。それに根負けした姉が、数枚の小銭を手渡しました。姉もついでとばかりに立ち上がり、同時に硬貨を賽銭箱に投げ入れます。妹が喜び勇んで鈴を鳴らし、姉は静かに手を合わせます。妹も真似をして手を合わせました。手を下ろした姉が時間を確認し、焦った様子で妹の手を引き帰路につきました。
その神社の屋根の上。一日中微睡みながら参拝客たちを眺めていた黒猫が、にゃあと一言鳴いて夜の闇に消えていきました。
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