まさかの、私のサブ職の出番

私達は一日かけて町まで来た。

送ってくれたお姉さん達にお礼を言ったら何故かお姉さんの顔が赤くなったけど最後は笑顔で別れた。


「イズミ、町に来たよ」

「みぃ!」

「何か、あんまり良くない所みたいだけどね」

「みぃ?」


私には町に入った瞬間から黒いモヤモヤが町全体を覆っているのが見えた。

(凄いいっぱい、悪性(あくせい)が発生してる)


黒いモヤモヤは悪性といってその名の通り悪の力を持っている。

例えば、植物を腐らせたり、人の罪悪感を感じ無くさせたり、人の欲望を強くしたり、人やモンスターの理性を無くしたりする。


「おい!お前、吟遊詩人か?」

「いえ、学生です」

「ちっ、なら用はない」


悪性は吟遊詩人の音楽に弱いのか、吟遊詩人の音楽を聞くと力が弱まる。

なので、みんな無意識に吟遊詩人の音楽を聞きたくなるのだ。


「みぃ!みぃ!」

「イズミもなんとなく分かった?モンスターは本能で何か危険だって分かる子が多いみたいだけど、、、人は違うから仕方ないか」


町を歩いているとケンカが多い。

新しくこの町に入ってきた冒険者達を見かけたので様子を見てみると、その冒険者達に若い男が近寄って来た。

(あいつ、真っ黒だ。あいつがこの町を悪性だらけにした奴だな)


「冒険者さん達、この町は初めてですか?」

「ああ。宿を探してる所だよ」

「なら、私がご案内しますよ。こっちです」


そう言って冒険者達の肩を叩いていた。

(あいつ、冒険者達に悪性を付けた!しかも、かなり沢山の悪性を付けたな。あいつが離れたらアレをするか)


私は冒険者達を追いかけながら、カバンからあるモノを探していた。

(確か、ここら辺に入れてたはず、、、!あった。コレを使えば大丈夫なはずだ)


「冒険者さん達、ここが宿ですよ。それでは、また」


男が冒険者達と離れたので、私は冒険者達に近づいてみる。

冒険者達は悪性を入れられて少ししかたってないのでぼーっとしている。

悪性は人に馴染むまで少し時間がかかるのだ。

私は冒険者達の後ろに立ってカバンから出した五センチくらいの青い石をかざした。

(まさか、私のサブ職の出番が来るとは思わなかったな)


〈神聖なる青よ、穢れ(けがれ)を吸い浄化せよ、聖青(せいせい)〉


私が浄化の言葉を唱えると冒険者達に入っていた悪性が私の持っている青い石に吸い込まれた。

悪性を吸い込んだ石は少し黒い色になったけど、浄化したら元の綺麗な青い色に戻る。


「みぃ?みぃ!みぃ!」

「ん?私が何をしたか知りたいの?」

「みぃ!」


イズミが知りたいみたいなので説明した。

私のサブ職が神聖者(しんせいしゃ)というもので、悪性を浄化出来る人の事をいって、生まれながら持っている資質でモンスター使いと同じ様に他のサブ職は取れなく数も少ない。

悪性を浄化する力を持っているだけなので、戦いにはなんの役にも立たないサブ職なのだ。


「私の場合、吟遊詩人と神聖者だから戦う力が無いんだよ。だから、レイガくん達がよく私の心配をするんだ。まぁ、確かに戦えないし弱いから一人だと心配だよね?」

「みぃ?みぃ!」

「今はイズミが守るって?ありがとう。町を少し浄化したら直ぐこの町から出よう。町が浄化されてるってあの男が気づいたら危ないからね」

「みぃ!」


私は町を歩いて悪性が酷い所を浄化する。

(ここが終わったらもう大丈夫かな?あとは自然に浄化すると思うし。あの男に気づかれる前に町から早く出よう)



私とイズミは町を出た。

あの男が町を出る私達を見かけた後に、町の様子に気づき私達を追って来る事を私は気づかなかった。


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