あの頃の話 その三
「そのあとローズくんとレイガくんが会ったんだけど、ローズくん直ぐにレイガくんになついちゃったんだ」
イズミは少し眠そうだ。
「最後にもう一つの出会いの話をするね?子守唄の代わりに聞いてね」
いつも通り泉の所で歌を唄ったらレイガくんが来たので、レイガくんと少し話した帰りに裏庭で女の子が隠れる様に座っていた。
「レイガ様を守りたいけれどご迷惑はかけたくない。どうしたら、、、人には話せないわ」
「どうかしたの?お姉さん」
「あっ!」
女の子は泣いていた。
「ごめんね?こんな所見られて嫌だったでしょ?」
「私が勝手にここで泣いていただけで貴方は悪くないわ」
「お姉さん良い人だね。普通は見られたら何でこんな所に居るのかって怒るよ?」
「私が勝手に泣いていただけで貴方はこの通り道を通っただけよ。怒る理由がないわ。というより、私の方こそ泣き顔なんてものを見せてしまってごめんなさいね」
「?、、、お姉さんの泣いてる顔は綺麗だったよ?お姉さんの心が綺麗な証拠だね。けど、私はお姉さんが笑ってる顔の方を見たいけどね」
「き、綺麗?、、、ふふっ、ありがとう。少し元気が出たわ」
「やっぱり、お姉さん笑ってると可愛いね。可愛いお姉さんの顔を見られて私も嬉しいよ。じゃあね、お姉さん」
私はその場所から去ろうとした。
(お姉さんはもう大丈夫みたいだし、知らない人があまり居ても気まずいよね?)
「待って、その、もう少しお話を聞いてくれるかしら?」
「お姉さんが良いなら良いよ?」
「お願い。その、私が泣いていた理由はレイガ様の事なの」
「レイガくんの?」
「貴方!レイガ様と知り合いなの?」
「うん、友達だよ」
「レイガ様のお友達、、、。レイガ様のお友達に言う事ではないのだけど、、、。私、レイガ様のファンなの!」
「レイガくんにファンがいっぱい居るのは知ってるよ?」
「私はレイガ様に恋愛感情を持っていないの。私が持っているのは尊敬と神様を崇める様な信仰心なの」
「そうなんだ。けど、お姉さんは何に悩んでいるの?」
お姉さんは少しためらってから話し始めた。
「私はレイガ様がとてもお強いのを知っているの。けれど、私、その、、、私がレイガ様をお守りしたいの!」
「私ならお姉さんみたいに綺麗な人に守られるのは嬉しいけど、レイガくんは男の子だもんね」
「綺麗?嬉しい?、、、そうなの、レイガ様にご迷惑はおかけしたくないの」
お姉さんは何故か顔を赤くしたあとそう言った。
(レイガくんに迷惑かけない様な守り方か、、、、!)
「お姉さん」
「何かしら?」
「最初はファンからレイガくんを守れば?」
「ファンから?何故?」
「ファンの中には過激な人がいるんだ。それにレイガくんは他人にベタベタ触られるの嫌いでしょ?だから、最初はそういう人達からレイガくんを守れば良いよ」
「そうなの!分かったわ。けれど、さっきから言っている最初っていうのは?」
「レイガくんに私は守りたいだけで貴方を不快になる事はしたくありませんっていうのを分かってもらえれば、レイガくんお姉さんの事を信頼して守らせてくれるよ」
「ありがとう!頑張ってみるわ」
「うん、頑張ってね」
そう言って別れようとした時、お姉さんが引き留めた。
「ごめんなさい!私まだ名前も言ってなかったわ。私は二年魔法剣科のランジェよ」
「私は一年吟遊科のセイカだよ。よろしくね、ランジェさん」
「こちらこそ、よろしくお願いするわ。セイカさん」
ランジェさんが自己紹介してくれたので私も自己紹介した。
(今日は綺麗なお姉さんのランジェさんと知り合いになれた。良い日だな)
ランジェ視点
私はレイガ様をお守りしたい!けれどそんな事をレイガ様は望んではいないでしょう。
レイガ様のご迷惑にもなりたくない。
けれど、レイガ様をお守り出来ない事が悔しく涙が出た。
その時、一人の女の子が私に声をかけてきた。
振り返ると布を被った吟遊科の女の子が居た。
その子は私が泣いていたのを見て謝ってきた。
泣いている所を見られて私が嫌な気持ちになっただろうからって言っていたけど、私が勝手に泣いていただけなのでその子が謝る事はない。
むしろ逆に泣いている顔なんて見せてその子が嫌な気持ちになったでしょうに。
なので、私はそう言って謝るとその子は私の涙は綺麗だった、心が綺麗な証拠だと言った。
しかもその子は私の笑った顔が見たいと言った。
私は綺麗と言われて少し動揺したけど、その子が心から言っている事は伝わったので少し元気が出て笑ってしまった。
その子は私の笑った顔が可愛いと言ったあと立ち去ろうとしたので私はとっさに引き留めてしまった。
その子は私が良いなら良いよと言ってくれた。
私はさっき会ったばかりのその子に泣いていた理由を話した。
驚く事にその子はレイガ様のお友達だった。
(レイガ様をくん付けで呼んでいる方を初めて見ましたわ!本当にお友達なのね)
私はこの子なら大丈夫だと思って話を進めた。
私はレイガ様のファンだけどレイガ様に恋愛感情は一切なく、あるのは尊敬と神様を崇めるような信仰心なのだと説明した。
その子は私が何に悩んでいるのかを聞いた。
私は少しためらってからレイガ様がお強いのは知っているけれど、私がレイガ様をお守りしたいと打ち明けた。
その子は自分なら私みたいな綺麗な人に守られたら嬉しいけどレイガ様は男の子だもんねと言った。
(この子は一切意識して口説いてないでしょけど、心から言っている事がなんとなく分かるのでトキメキそうになるわ)
顔が赤くなったけど、話を進めた。
レイガ様のプライドを傷つけたり不快な思いをしてもらいたくなかった。
すると、その子は最初はファンからレイガ様をお守りすれば良いと言った。
説明を聞いてみると、なるほどと思った。
レイガ様に少しずつ信頼してもらえれば良いと分かった。
悩みの解決方法を教えてもらったのでお礼を言った。
その子は頑張ってねと言って立ち去ろうとしたのでまた引き留めて今度は自己紹介をした。
その子はセイカさんという名前だと分かった。
後に、セイカはかなり(特に女の子に)人気になってしまった。
あの性格なら仕方ないと納得してしまったけれど。
セイカさんと知り合って少したった時にレイガ様がセイカさんに恋をしている事がわかり“天女様と神様を応援する隊”を作った。
セイカさんには感謝しているし、レイガ様の次に守りたい子でもある。
私はセイカさんが幸せになるのを見守っていきたいと思っている。
あの時、あの場所で泣いていて今は良かったと思っている。
あの優しい雰囲気と何を話しても大丈夫だと思わせる不思議な魅力を持ったセイカさんの友達になれたのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます