Predictive dreamer-予知夢の代償-(仮)

第一章

1話 知ってる


*****


「始めよう。終わりのない争いを。」



*****




地響きにも似た歓声と同じくらいのどよめきが会場中に響き渡る。



今日は風が気持ちいい昼下がりの午後。

彼女は東京のとある競馬場にいた。




「ぷっはーっっっ!やっぱ馬はいいね!



あー!

私はきっと、この為に生きてるんだよ!

ほんっと!最高!」



会場の歓声に負けないくらいの声で叫ぶ少女。



喉を鳴らしながらビールを飲むその少女は、必要に隣のおじさんに絡んでいる。


「ねえちゃん、えらい上機嫌じゃねーか!

おい、こりゃ、もしかして!?」



「うんっ!」


と言って彼女は馬券をちらつかせる。




「三連単だよ〜ん」


もうほとんど呂律が回っていない彼女は


「私の予想は百発百中だからあとはオッズだけ味方についてくれれば100円も100万になっちゃうの


お兄さんは?負けちゃった?」



彼女は確認する様におじさんを覗き込み話しかけた。



「いいや〜

おじさんはほら!

競馬なんて普段やらないのにどうしちゃったんだろうな!

ここに行けば何か変わるような気がしたんだけど。


はっはっは!


全く、おじさんどうしちゃったんだろうな。」


おじさんは大笑いしながら馬券を握り潰して

ガサツにシャカシャカ音のするジャケットのポケットにしまった。


「ねえちゃん!

さっさと馬券払い戻してきちゃいな。

無くしちまうぞ!」


男はそういうとタバコを吸いに喫煙所へ行ってしまった。


「…うん。そうだね。

ありがとう、そうするよ。」



一瞬だけホッとしたような切ない表情になった少女はおじさんを見送り、すぐに残りのビールを飲み干す。


「はぁー。

眠たくなってきちゃった。



あ、いけない。待ち合わせに遅れちゃう。」



彼女は持っていた馬券をHERMESのケリーに大切そうにしまった。



「ふふふ。ダンなんて言うかな」



スキップにならない足元は待ち合わせのカフェに向かう事にした。



そして、彼女はそのまま馬券の払い戻しをせずに競馬場を後にする。


*****

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