やはり出ました、酔っ払い!


 そういえば、おばあ様はどうされているのかしら?

 武子様とお話しされておられますね……

 そうだ、まだ菊酒が残っていたわね、武子様とおばあ様には日本酒の方が良さそうだし。


「ねえ、皆でおばあ様にご挨拶をしようと思うのだけど、良いかしら」

「お供いたします」


「メイドの皆さん、少し集まってくださいな」


 で、私以下、メイドの皆様も一緒に8名で、おばあ様のテーブルへ。

「おばあ様、武子様、よろしいでしょうか?」

「あら、嬉しいわね、なに?」


「お二人には、日本酒の方が良いかと思いまして、さっきお出しした『菊酒』をお持ちいたしました」

「それと、メイドの方々にもお声をかけていただき、お礼を申し上げに参りました。」


「それはご丁寧に、皆さん、先ほども言いましたが、雪乃さんを頼みますね、しっかりしてても十三歳、何かと支えてあげてね、悪いようにはしないから、陛下にもよく言っておくわ」

 メイドさんの一人が、感謝の言葉を述べていました。


「それからね、この王国料理、雪乃さんが作ったのよね、でも私は帝国料理も作って欲しいわ」

「機会があれば必ず作ります」

「難しいのではなくて良いのよ、凝った料理はこの年になるとしんどいのよ、あのシリアルというもの、あのようなシンプルな物が、年寄りの口にはね」


「それと、皇太子はお酒では失敗はないわよ、陛下は直ぐに酔っ払うけどね」

「皇后は苦労しているけど、皇太子の妃になるなら、心配は無いわよ」


「おばあ様は何でもご存じなのですね」

「この年になるとね、人の考えぐらいは何となく分かるのよ」


「あとね、せっかくだから、雪乃さんの歌を聴きたいわよね、帝都第一衛戍(えいじゅ)病院での話、この年寄りの耳にも入っているのよ♪」

「それは……」


「お願い、年寄りのささやかな、お・ね・が・い!」

「武子さん、皇帝陛下に雪乃さんが歌をうたってくれると言ってきてね、年寄りのたっての頼みを、孫が聞いてくれるらしいのよ♪」


「……分かりました……」

「唱歌にしてね、誰でも知っているから?」

 よく見ると、おばあ様、すこし酔っておられるのでは……


 遠くで、お父様のでかい声がしています。


「余の娘が歌を歌うそうだ!帝都第一衛戍(えいじゅ)病院での話、皆も聞き及んでいるだろう!」

「拍手を頼む!余の娘は恥ずかしがりなのだ!拍手が小さいと歌わぬぞ!」

 

 ひどい!


 嫌でも歌う羽目になったのです。

 アカペラで歌うのですよ!ピアノ伴奏もないのに!

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