第三部 秋はロマンスのかけらぐらい、なくもないの巻

二転三転、恋は切なく腹立たしい

帝都の猛暑


 夏の離宮から帝都に戻ってきました。

 八月になっています。


 私は相変わらず読書三昧、といっても……

 あ・つ・い!

 クーラーが必要です!


 しかし、この世界にはクーラーが存在しない!

 クーラーはウィリス・キャリアが1906年に特許を取っている――ウィキペディア、ウィリス・キャリアの項目より――のですが、この世界にはかけらもない!

 皆さん、扇風機で堪え忍んでいる……


 1920年代には、アメリカあたりでは普及し始めているのですが、何度も言いますが、この世界にはかけらもない!

 電気はあるのですが……


 この帝都の猛暑対策として、とにかく有っても違和感のない、リビング扇風機を各部屋に一つ、そしてメイドさんにも一つ、ばらまいたのです!

 なんせ、1,980円のものが有ったからです。


 一応、首振り、タイマー、風量調整が付いています。

 リモコンは付いていませんが、とにかくこの値段、2,000円以下なので、文句はありません。


 案外にメイドさんには絶大に感謝されました。


 日中の暑さと言ったら……かといってエアコンを取り寄せても、私には設置出来ません!

 でも、良い物が有ったのですね♪スポットエアコン♪排熱ダクト付きのものです。


「このパイプが通るところを作ってくれない?冬になったら閉じられるようにしてね♪」

 排熱専用 延長ダクトで排熱処理、応接室の窓に大工さんを呼んで、ダクト専用の穴をつけてもらいました。


 まぁ、あまりおおっぴらには出来ませんので、応接室に取り付けただけです。

 でもメイドさんの控え室というか、家事室というか、いわゆる女中部屋にもおいたのです。

 壁に穴は開けてはいませんが、スポットエアコンですから、冷気を浴びることはできますからね。

 熱中病対策ですよ♪


 何故かというと、売っていたのが2個セットで売っていたのです。

 お得なんて、大きく宣伝されていて……思わず……女って、このような言葉に弱いのです!

 威張ることはないか……

 さらにメイドさんに感謝されました。


 なのに、今日は渋い顔でお小言を飛ばしてくれます。


「雪乃様、少しばかりはしたない格好ですが……」

「すいません、あまりに暑くて……まぁどこに出る予定もないし、お父様もお母様も夏の離宮ですし……誰も来ないでしょう?」


 昨日から洋子様と文子様は里帰り、ダイアナ様は朝から大使館で事務手続き、王女様と言えど、転居とか、帝国一女への編入試験とか、それなりにありますのでね。

 今日は夕方まで、私だけなのね♪メイドさんも午後四時ぐらいまで、宮殿に呼ばれておられます。


 そう云う訳でだらけているのですね。


 私の格好?

 タンクトップ、590円で大量購入!

 ショートパンツ、999円、これも大量購入!

 

 あと、キャミソール、タンクトップと同じシリーズで590円、大量にこれも購入しています。


 太股や肩は丸出し……

 でもね、十三歳でも、そこは白人系ですから、それなりの十三歳……健康的なお色気?


「もうすぐ神津小百合様が来られるのでは?」

「小百合さん?そう言えば……」


「いけない!」

 あわてて、ゆったりサイズのロングのワンピースをこの上から着たのです。

 フリーサイズのワッフル生地でドルマン袖、1,999円の特価……

 155センチ、44キロの方が違和感なく着れると評価されておられましたので、これも大量購入。


 今日は小百合さんが遊びに来る日でした。

 たしか、お菓子の作り方を教えてあげると約束したのでした。


 よく聞くと、神津家には電気冷蔵庫があるようです。

 最近発売された物で、お値段は家が買えるほど……

 そういえば、朝比奈の実家にはありましたよね……


 電気冷蔵庫があるなら、お菓子初心者でも作れる、チョコビスケットケーキをご伝授しましょう♪

 ネットにたくさんレシピがあります♪

 私、検索すれば、女子力アップで嫌でも身につきますからね。


 この猛暑なので、お持ち帰り出来るように、氷をスタンバイ、型は紙のパウンドケーキの型が良いでしょうね、コーティングは上だけで済ませるのですよ。


 午前11時、きっかりに小百合さんがやって来ました。

 

「お邪魔します♪」

「いらっしゃい、準備してあるわよ♪」


 さて、始めますか! 

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