第33話 力の理由 その2

 意識領域の拡張は脳機能以外の身体的な部分にも、影響を及ぼしていた。

 

 元来デンジュは、適応力に優れている、其れは正に神通力と呼べるほどであったのだが、今回の意識領域の拡張によって更に高次元へと飛躍した。

 つまり神通力を超えた力、未知なる事物を即座に受け入れ自分の中に取込む容量が無限に増えたといっていい。

 

 しかし取り込むだけでは、役には立たない。

 左の親指にはめたリングの力、其れが今回初めて発動したのである。

 このリングに刻まれた星が光っている間、霊体がカタカへ旅立っていたらしい。


 このリングは一体どんな力なのか?


 ミュウカ曰く、リングは意識領域の拡張によって高次元へ飛躍した適応力に反応して星が刻印された。

 そして、リングは本来の力を発揮するに至ったのではないか、ということだった。

 

 では、リングの本来の力とは何か?


 それについては、ケイリがエストから聞いていた話しに秘密があって、その内容はこうである。

 

 昨日、マレンス家に伝わる秘宝。

湯鏡ゆかがみ』に小さな星がひとつ浮かび上がった。

 湯鏡は、大昔に亜歩山に湧いていたという温泉を、石製の盆に張った、古代の魔道具である。

 

 湯鏡は言い伝えによると、大賢者現れし時、彼にとって必要なものを浮かび上がらせる。らしかった。

 

 古代の人は、世界にとって本当に重要なことについては一切書物に残さなかった。

 其れを、言葉や魔法、魔道具といった特定の者だけが扱えるものに変えて伝えてきたのだが、今回の星の出現は誰にとっても未知の出来事であった。

 

 ただひとつ、大賢者に関わることである。という事だけしかわからなかった。


 今となれば、このリングが魔道具である事は疑いようがない、しかも魔道具としては超高度な代物で、デンジュ以外このリングをはめることが出来ないようにできている。

 正真正銘、大賢者専用、規格外の稀覯きこうなリングなのであった。


 説明が長くなったが、リングは適応力のスキルで、ラーニングした物事を応用し実践できる力、その力をデンジュに付与した。

 

 今回は、語り魔法でラーニングした霊魂のトリップを応用し、過去に行くのではなく、現在の別の世界へ向けて、トリップさせたのだ。

 

 カタカへのトリップのキッカケは不格好で、ルタがボラワ諸島から転送された時、デンジュの体にルタが突如落ちた事で、起こった気絶がキッカケだった。

 

 其れがあってこそ、こうして、リングとラーニングの関係が理解できた。

 これで良し、としたい。


そして、いよいよ大賢者へのアセンションと秘法が始まるのであった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る