第25話

 午後18時50分。

「茅原さん。ちょっといいかな?」

「はい」

 

 バックヤード


「なんですか? オーナー」

「動画の投稿は上手くいった?」

「はい、おかげさまで。無理なお願い聞いて頂き、本当にありがとうございます」

「最初は何の事やらわからなかったよ。元恋人の誤解を解く為に、一週間前の店内の映像を、動画サイトに上げたいなんて」

「すみません。自分勝手なお願いして」

「あんな必死な表情で頼まれてしまったらね。断るに断れないよね。——それにしても、良かったのかい?」

「何がですか?」

「さっき。来てたと聞いたよ。君の元彼君」

「みたい……ですね」

「逢わなくて、良かったの?」

「仕事中だったので」

「じゃあ、仕事中じゃなければ?」

「……それは」

「後悔したんじゃんないの?」

「……」

「なら、次は後悔しないようにしないとね」

「でも、今は仕事中……」

「今日はもう、あがっていいから」

「でも……」

「これは言わないでくれって頼まれてたんだけど——今井さんね、茅原さんといつでもシフト変われるようにって、うちのレストランの近くで準備しといてくれてるんだよね」

「え……」

「だからさ、行っといで」

「ありがとうございますっ」

 

 莉菜は走り出す。

 

「あ、ちょっと待ってっ」

「はい?」

「今井さんにちゃんとお礼、言うんだよ」

「はいっ!」

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