第24話

「蓮!」

 

 とぼとぼと元気無く帰る後ろ姿に、茜が声をかけると、蓮はふり返る。


「ん?」

「蓮、この後、暇?」

「何だよ、いきなり」

「いいから」

「暇ではないよ。今だって、本番前、抜け出してきた所だし」

「じゃあ、ダメかぁ……」

 

 わざとらしく、嘆息する茜。

 

「何が?」

「いやいや。こっちの話」

「言いたい事あるなら、じらすな」

「今日、莉菜。シフト、19時迄なんだよなぁ〜。後、一時間ぐらいで終わるんだよなぁ〜。近くで待ち伏せしたら、会えるかもなぁ〜」

「……」

「どうする?」

「待つよ」

「なに?」

「待つ、つってんの」

「さいですか。じゃあ、私は仕事、戻るんで」

「あぁ。無理すんなよ」

「君が言うかね」

「どう言う——」

「いやいや。こっちの話だよ」

 

 そう言い、茜は踵を返すと、わざとらしく伸びる。


「あ〜あ、今日は忙しいなぁー。誰かさん達のせいで〜」

 

 茜の態度に何かを察した蓮は——

 

「茜」

「ん?」

「その……。ありがとな」


 すると、茜はニカッと笑い——

 

「一つ、貸しな」

 

 茜の背中が何時もより、頼りがいのあるものに見える、蓮だった。 

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