第22話 出逢い ①

 は何一つ見当たらず、を爆心地として、あたりの草木は放射線状にぎ倒されている。


「なんで爆発の中心に、こんな小さな子供が …… 」


 いち早くそこに歩み寄ったイチは、臆することなくその子供を抱きかかえた。


「目立った外傷はないようだな」


 爆心と重なっていた子供を、トーレは冷静に目視で確認する。


「 …… 少し黙れ、頭に響く」


 イチに抱き抱えられながらも、その子供は不躾ぶしつけ極まりない、分不相応な言葉を吐き出した。


「はっ! ずいぶん態度がでかいガキだな」


「 …… 力が入らねぇ」


 だらりとしていたその子供は、かろうじて首だけを動かし辺りを見回した。


「クソ、このしゃく …… 何を持っていかれた …… 面白ぇけどよ …… 」


「君、大丈夫? 痛むところは無い? 爆発の中心にいたんだよ? 何か覚えてはいないかい?」


「 …… (この世界の住人か …… 何の力も感じねぇな)」


「まともとは思えんな、警備に任せるべきだろう」


「(…… こいつは。まだ眠っている部分が大きいが …… この世界にも濃縮された気ジャムはあるか …… )」


「う …… うん、そうだね。警備に連絡をしよう」


「まぁ …… 待て …… 」


 その子供は、口重く言葉を続ける。


「…… 一人にされ面倒は困る。回復まで …… お前が少し …… 面倒を見てくれないか? その間に …… オレの事情も …… 話そう」


「え?! ダメだよ! 家族の人がきっと心配してるから」


「家族か …… 家族は死んだ …… オレ一人だ。気に …… するな」


「お前いくつだ? どう見ても三、のガキだろ? 一人な訳なかろう」


「悪いが …… 少し静かにしてくれ。意識が …… 飛 …… 」


「ちょっと! 君、大丈夫なの?」




 ……………………


 …………


 ……




「セフェク、どうした?」


「 …… じじぃ …… か?」


 目の前に現れたアテン王に、セフェクは困惑したような細い声を発した。


「その顔はどうした? セフェク」


じじぃ …… ? 待て …… 何かがおかしいはずだ …… 何かが …… 」


「おかしいだろ? その顔は。ほら、よく見てみろ」


 アテン王は手鏡をセフェクによこした。


「ぐぁああ! 顔が …… ! 顔が!」


 セフェクの頭蓋はほとんどが崩れ、中が露呈している姿が、その手鏡に映る。


「どうした、セフェ …… ク …… 」


 突然、アテン王の顔も崩れ始め、四肢ししも崩壊していく。


「やめろぉーっ!」


 目の前の状況にも、自身に起きている事にも、セフェクは絶叫するしかない。


「 …… み! じょ …… ぶ …… み! ねぇ!!!」


 途切れ途切れの声が聞こえてくる。


「大丈夫!? 君! ねぇ!!!」


 イチは、眠りについていたその子供が、突如叫び出したので慌てて声をかけていた。


「 …… ここは?」


「僕が借りている部屋。君は突然気を失ったから、僕がここに連れてきたの。まだ他の誰も知らないよ」


「そうか …… うなされたのか …… 。クソっ! らしくねぇな」


「あの後すごく悩んだけど、警備隊にも伝えていない。君には外傷も見当たらなかったし、何よりも特別な事情を感じたから …… 。君の話を聞いてから決めようと思った。もう一人のトーレという人は、関わる気がないと言って一人帰っていったよ」


「そうか …… 」


「事情を話してくれるかい? 爆発の中心に子供なんて普通じゃない」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る