第13話 セフェク ②
まさか扉を通る気で訪れてきたとは思いもよらず、門番二人は護衛部隊への連絡などもしていない。当然マニュアル外の出来事であり、今までの退屈な日常から、突然の勤務評価への危機的状況という落差にパニックを起こし、冷や汗を始め、息切れ動悸が止まらない。
「やっぱりでけぇなぁ〜、真下まで来ると上が見えねぇぞ!」
「立派な扉ですよねぇ〜」
セフェクとトトは扉の真下から見上げている。
門番は自分の
———
「お待ち下さい! セフェク様ぁ〜!」
門番は地響きとも取れる不器用に
が、セフェクは地が激しく揺れようと、そんな事はお構い無しだ。
「よぉし、思っきし押せばいいのか?」
セフェクはその重厚な扉に両手を当てる。
「ホォっとしたぁぁぁ!」
門番が喜びのあまり声を上げたと同時に、立ち上がっては歓喜のポーズを取っていた。
「なんですか〜、セフェク様は鍵をお持ちじゃないのですね? 扉は、一度入った者以外は、鍵がなければ開けられませんよ〜」
門番は
「扉自体の能力でして、目の前まで近寄ると過去に一度記憶したあらゆる本人データ、4Dスキャンから、顔、体、脈拍、呼吸、虹彩、行動パターンの基本はもちろん、
「おー、開くじゃねぇか」
「え …… ちょ …… なん …… やて? ちょ …… 」
扉は高さを忘れ等身大の扉であるかのように、セフェクの腕の動きに吸い付くように自然と開いた。
扉の境目は空間が歪み、光の屈折からなのか、向こう側を視認することはできない。
「セフェク様! ご勘弁願います! このまま行かせてしまっては私たちの首が飛びかねません!」
門番は片膝をつく姿勢から、いつの間にか両膝両肘をつく姿勢となり、懇願する形で必死にセフェクを止めようとしていた。
「残念だけどその言葉はね、セフェク様の抑止にはならないのよ」
トトがボソリという。
セフェクは口角をあげると、無邪気な笑顔を門番に見せる。
「あとで感想を盛りに盛って話してやるから、楽しみに待っていな」
セフェクはまるで、発売されたばかりのコミックスをこれから読まんとする子供が抱くようなワクワクを胸に、軽やかに前に向かって、トトと扉を通り抜けて行った。
「ああ …… 行かれてしまった …… 」
その場に頭を
「ぶはぁ〜、ド緊張ぉ〜…… いざ噂の本人前にすると何も出来なかった〜。お前はすごいな〜。この事はそのまま上へと報告して、あとはセフェク様の土産話に期待しよう。お前も長い間、中は気になっていただろう?」
「 …… 盛りに盛った話ってのはどうなんだ?」
「腹いっぱいになるって事だろ?」
「食欲か …… 悪くないな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます