オレ、彼女

神稲 沙都琉

第1話

俺、ナツキは小さい頃荒れ狂う親父からお袋と2人で逃げて、逃げて。親父に見つかり、そこから逃げるを繰り返していた。


気づけばお袋とはぐれてしまっていた。


お袋を探し、あちこちを転々とする俺。

親父にやられていないかと時折思う。


ある日、この町にきて、コウスケの経営しているスーパーの前で力尽きてしまった。

いわゆる、行倒れである。

そのまま、なし崩し的にコウスケ夫婦に世話になりバイトまでさせてもらうようになった。


バイトを始めて数ヶ月後、ヒナタに出逢う。バイトのスタッフはみな俺を避けるような感じの中、何故かやたらと俺にかまうヒナタ…。しぜん、俺も気づけばヒナタにはよく話しをしていた。


ある日のこと。バイト中にヒナタが倒れた。その日、俺はコウスケに頼み込んでシフトを早めにあげてもらいヒナタを自転車で家まで送った。


そして、今日。今日もまた。あの日からずっとバイトのとき。行きはもちろんだが帰りも。後ろに座るヒナタの体温を背中で感じながら自転車をこぐ。必死にこぐ。

『しっかりつかまってろよ』

返事の代わりに腹にまわった手がギュッとしまる。


シフトも同じだし、彼女の家もちょうど通り道だし。いいんだけど、なんだかなぁ。嫌いじゃないし、かわいいし。

いやいや、俺は男ダゾ。ヒナタ的にはどう思ってるのか?10分ほどの距離を葛藤しながら自転車をこいでいる。


『ついたよ。』

自転車をとめ、ヒナタが降りやすいよう自転車を傾ける。

『ありがとう。』

いつもならバイバイ、と軽く手をふり家に入るのだが今日は少し違った。

『お礼もしたいし、あがって行きませんか?』

どうしたら、いい?

中から家族がくる足音も聞こえる。

どうしたら、いいんだろう?


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