ハローストーリー
@maruco07428
第1話 榛名恵
大川晴、これが彼の名前。
いつもいつもしつこく私におはよう。と挨拶をしてくる変人だ。私はというとその手の挨拶が嫌い、なんていうか言葉だけで気持ちが入ってないし、中身や意味のない言葉と感じる。自分の言葉で表現する、そういう方が私は好き。
高校3年生の学校生活は思わぬ形で幕を開けた。「緊急事態宣言」新型コロナウイルスの影響で登校も部活もなくなり、私のインターハイは自然消滅。元々全国で戦えるような実力ではないと思っていたけどそれでも区切りがなくなったことで、女子ハンドボール部員みんなの気持ちはモヤモヤしっぱなし。久しぶりに学校に行けるようになった時もみんなマスクとソーシャルディスタンス、もちろん友達に会えたことはスゴい嬉しかったけど何か晴れない気分だった。一度は緊急事態宣言がとかれたが、最近二度目の緊急事態宣言が出されることとなった。今年から大学入試センター試験は共通テストに変わり、コロナと重なり新しい生活様式、新しい試験様式となっている。プレッシャー、過去問がおそらく通用しない未知の領域では自分で答えを導き出せる力のある人が前に進めると思う。私は試験日が近づくにつれてどんどんナーバスになっていった。そんな私に向かって、やっぱりあいつは言ってくる。
「榛名、おはよう。」
「…」
「いやー参ったよ。自粛期間中に家で練習してたらさ、姉ちゃんにうるさいから出てけって怒られてさ、今外出自粛中なんだぜって言ったらもっと怒ってきて…」
いつもそうだがこの話にはオチがない。私が返事をしようが相槌を打とうが構わず話を続けてくるので、最近は何も言わずに話を聞いている。正直気が紛れるというのはある、こういう時間は無駄にも感じるけどいまはその無駄が息抜きになるほど張りつめているのかもしれない。普通は男女がこうして話しているとクラスで変な噂が立ったりするけど、大川はそんな心配がないから安心できる。男女のいざこざはあまり好きじゃない、私は同年代の女子ほど男性に興味はなく、今はカヨちゃんの方が大切だ。
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