第36話12月24日-3-
あっという間に夕方を迎えた
「そろそろ行かなきゃねー」
「ほんとだ、もうこんな時間ですね」
駅前のビルを後にし、ライブハウスへ向かった
こころなしかというか、駅前は人が明らかに増えていた
カップルぽい男女やクリスマスの集まりみたいな感じの雰囲気の10代20代で溢れかえってた
ビル前からそこそこの所まで抜けるのに人波で一苦労しそうなくらいに
うわー、ひとすごっ
一瞬惚けてた僕はいきなり引っ張られた
ヒトの熱気で少しばかり温度があるとはいえ気温と風は冷たい
引っ張られると同時に手に暖かさを感じた
「ほら行くよ、迷子になんないよーにね」
ハルさんに手を掴まれてというか
手を繋がれて
人波をかきわけていく
いきなりの事に驚くも人にあまりぶつかったり、足を踏んだり踏まれないよう、抜け出すのに気を向けることもあって
頭の中がぐるぐるになった
地元民ならではの裏道ショートカットでようやく人波から脱出できた
それでも手は繋いだまま
どうしよう、どのタイミングで離せば
なんて事を考えたのは意味がなかったようで
ライブハウスに向かうまで
ずっと手を繋いでいた
鏡を見てないから分からないけれど
挙動不審になってないか
自分が不安だった
よく見るとハルさんも少し顔を赤くして
ちょっと落ち着かない様子だった
「さーて、こっから今日の本番だね」
妙な空気にならないようにか
自然体を装うようにハルさんは言った
「ですね、多分大盛り上がりでしょうね」
ようやくいつもの雰囲気になりつつ
ライブハウスへと僕とハルさんは向かった
ライブハウスはごった返していた
入口付近にたなりゅーとマネージャーがいた
「おーお疲れっす雪君」
中学生に見えない大人びたモデルのようなファッションと佇まいの後輩は、笑顔は子供っぽくこちらへ向けた
「いやー今日いつものライブより凄い人ですね!クリスマスパーティもあるからいつも以上っすね」
あーはぐれないように手なんか繋いじゃって
こそっと悪戯っぽく僕にだけ聞こえるように耳打ちするたなりゅー
こいつはこいつでマネージャーと腕組んで
しれっとしている
ほんとに中学生なのか
改めて思う
「まっ、したらばとりあえず4人でとっとと入りますかっ」
たなりゅーに促されライブハウスに足を踏み入れた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます