第11話皐月さんとカフェとお願い

ごめんね十条君!


放課後の教室、深々と頭を下げる足立さん



一緒に家から登校発言で、昼休みまでお互いクラスメイトに質問責めだった



戸惑いはしたけど、足立さんにもクラスメイトにも悪気は感じなかったし、僕自身クラスメイトと接しなさ過ぎた部分は自覚してたから良い機会だったなと思うようにしたので気にしてない


僕から深掘りする気もないが、なにか彼女も思うところがあっての事だったのだろう


大人しかった足立さんが急にこんな事をするって、実は軽いノリではないんだろうなと思えた


教室に入る前、凄く緊張した様子だったし


一瞬見た横顔は不安そうだったから




これをしたかったけど1人で出来なかったけど2人でなら、、そんな気持ちで至ったのかなぁと思った


その後の台詞には予想外過ぎて驚いたし焦ったけれど




「足立さん、全然大丈夫だよ。ただ、タトゥーの事だけは絶対に誰にも言わないでね 。大変な事になっちゃうから」


そうだ、これだけは伝えて守ってもらわないと


不本意な最終学歴高校中退は避けたい所だ


「それは絶対言わない!絶対内緒にするっ!」


良かった



「まぁ僕もこれでバイトがある日、1回帰って髪を上げて行く手間が無くなったし、それはそれで良かったよ」


それは足立さんもかな


そう言うと足立さんは目に見えてほっとした表情になり顔を綻ばせた



西日が差し込む放課後の教室


グラウンドからは部活動をする生徒の声が聞こえる


放課後の教室に残ってクラスメイトと話してるなんて数日前まで想像もつかなかった




「さくらー、忘れ物どした、、あっ」



ガラッと扉が開き、女子生徒が口に手を当てている


「あ、邪魔しちゃったかしら?」


隣の席の品川さんが近所のおばちゃんのようなノリで軽く手を振る


「桜が忘れ物したから先に帰っててって言ったけど、忘れ物ならすぐかなーって思って下駄箱で待ってたのよ。なかなか来ないから見に来たんだけど、なるほどなるほど、ごめんねっ」


なにがなるほどなんだろうか


きっとなにか誤解であろう方向に向いて進んでる


品川さんは顔の前でちょこんと手を合わせてごめんねを表す


「違うってば皐月(さつき)!その、十条君にちょっと迷惑かけちゃったから謝ろうと思って、みんなの前だと言いづらかったから、、その、今、、」


顔を赤くしながら、手をバタバタと振りながら言い切れない説明を品川さんにする足立さん



「と、とりあえず2人とも!学校から出よ、うん!皐月忙しくないよね?!落ち着いて3人でカフェでも行こ!違うから、ちゃんと冷静に話そ!」

話を切り替える足立さん



うん、ゆっくり話しておいで



って、え、3人って僕も入ってるの?


品川さんは、見るからに面白そうだと目をキラキラさせながらも棒読みで、えーいいよお邪魔になっちゃうしーと僕に向けて投げかける


表情とトーンと台詞が合ってないよ品川さん



今日はバイトも無いし別に時間は大丈夫なんだけど



足立さん下向いちゃってるし



「とりあえず、出ようか。駅前のちょっと裏入ったとこに【るのあ】があるし、ちょっと話してから帰ろうか」



これで良かったらしい


足立さんは大きく頷いて、品川さんは、うーんじゃあ折角だしお言葉に甘えて御一緒させてもらおうかしらって台詞調で即答だし




門を通り過ぎる時、何部か分からないけれど外周を走っていたクラスメイトの男子数人とすれ違った


僕らを見て、この世の終わりのような表情をして何語か分からない奇声を発していた


かろうじて聞こえた日本語で


また十条君が、しかもあの二人と、今までのはなんだったんだ、チート


と言う単語が聞こえた



明日も何か質問責めになるのかと思うと少し憂鬱だった


品川さんはなぜかとてもいい笑顔で、何度も振り返って彼らを見ていた、何を確認してるんだろうか



客観的に見て、2人の容姿は良いしそこに僕が居たら場違いな程に目立つと思う


僕としては悪目立ちしなく無いし、女子2人に男子1人ってのも気まずいし、人に見られる所を一緒に出歩くのは如何なものであろうと思う


成り行きだから仕方ないけれど




目的地のカフェるのあに入り、各々ドリンクを注文して一息ついた


「さてと、、」とぽつりと切り出す品川さん



「そうゆーことなの?実際」


いきなり本格的な誤解の部分がきた


なにがそうゆーことなのかって具体的に言わずともそうゆーことで伝わる不思議なやり取り


足立さんが上手く説明出来るか分からないし、僕もそんなに説明上手なわけでもないけど、誤解は解かないとな

「品川さん、誤解があ」


「皐月(さつき)でいーよ」


あ、の辺りで遮られた


気を取り直して、いつの間にか来ていたアイスミルクを1口飲んで口を開いた


「皐月さん、誤解があって。

えっと、今日足立さんと一緒に僕の家から登校して来たのは事実なんだけど、みんなが思ってるような誤解は本当にないんだ。」


大真面目過ぎる表情でもしてしまったのか、少し驚いたように眼をパチクリさせて僕と足立さんを見る皐月さん


足立さんはぶんぶんと音がしそうなくらい首を縦に振ってる



「にしても、ビックリすぎだよ。十条君と桜って」



確かに僕なんかが足立さんと一緒に居たらそう思うだろう


「2人を知らない人から見たら普通にお似合いリア充って感じだろーけど、クラスメイトからしたらこのクラスになって以来1番の驚きだよ。一応、桜と一番仲の良い友達って自分では思ってるあたしでもそう思うくらいだしー。ね、桜?」


ちょっと棘があるけど、冗談と充分に伝わる笑みを浮かべる皐月さん


足立さんは下向きながらその、とか、タイミングが、などと言葉に出来ずにいる



なんて気まずい言葉の爆弾を


「いや、ほんとに違うんだよ皐月さん。

一昨日たまたま新宿で出くわして、お互い1人でぶらついてたからちょっと一緒に行動して、、」


ダメだ突っ込むところが多すぎるし、まず僕は説明なのか弁解なのか言い訳なのか何をしようとしてるんだろうか


予想通り、「でも話したこともないような2人が急にねえ、、偶然でも、、あっ、偶然の出会い!」


揶揄うように、でも嬉しそうに何処までも皐月さん展開を広げる



参ったなぁ


何処まで話していいか分からないし、足立さんも何か言ってくれないと


途方にくれ始める精神的準備をして、未だ下を向くに足立さんにそれとなく「足立さんの方が、説明しやすくないかい?」と声をかける


チラッと顔を上げて対面に座るまっすぐ僕を見て、一瞬自分の隣の皐月さんを見る足立さん


「桜」


一言言ってまた下を向く


え?


「足立さん?」


今度は反応してくれない


どしたの、桜?と皐月さんが声をかけても

ぷいっと、横を向いてしまう

擬音が出そうな感じで



あ、と言葉にせずその口を開く皐月さん


「十条君、桜でいいよ」



皐月さんを名前で呼んで、足立さんを足立さんと呼ぶのに不満をもったようだ


いや、今はそこでは無いのに、、


けど話は進まないし意を決して


「桜さん、桜さんからも説明を、、」


と、言ってみる


おずおずと顔を上げて皐月さんにぽつりぽつりと話す桜さん


たまたま新宿で遭遇して、あたしから声をかけて夜中まで遊んでしまって、泊めてもらって、その翌日も押しかけてしまって、、


皐月さんはここでようやく今日一番の真顔になった


「なんで桜がそんな遅くに、バイト帰りだと思うけど新宿フラフラしてたのかとか置いといて、桜が男の子に自分から話しかけるなんて、、」


なんだろう、子供の成長にしみじみとする親のようだ



「十条君、桜、お姉ちゃんにべったりで、今お姉ちゃんが離れて不安定なの。

あたしも家がちょっと厳しくていつもいつもとまでは寄り添ってあげれないの。さっきのは冗談半分として、桜と仲良くしてあげてね?」

顔の前で手を合わせて真面目な顔で言われた


冗談半分って、半分の本気は何処なんだって野暮な事は聞かないけど



とりあえず僕は、折角話す機会が出来たクラスメイトだし、仲良くさせてもらうよと無難な答えを出した



いつもいつもとまでは寄り添ってあげれない


その言葉が妙に頭に残った



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