第2話 眠れない夜と突然の非日常


平日の深夜に、クラスメイトと新宿のクラブでばったり遭遇


しかも、お互いに学校ではそんなキャラでもない


なんという想定出来ない偶然だろうか


まだクラス替えをして3年になって2ヶ月程しが経ってないけれど

学校の事でこの2年余りで今日が1番驚いた事だろう



なんとなく、笑い出す2人



互いが互いになんでこの人がここにって思って


この偶然にきっと何故か笑えてしまったのだろう



「ここ時々週末来るんだ、平日は今日が初めて。

特に理由はないけど、明日は学校いいかなとか急に思っちゃって、なんか来ちゃったんだ。足立さんはよく来るの?ここ」


BARスペースの隅に移り、グラスを傾けながら恐らく挨拶程度はしたけれど、今日今まともに初めて話す足立さんと僕


「わたしも時々週末来るくらいだよ。平日は今日がはじめて。お互い初めて来た日に偶然会うって凄いね!」


本当に凄い偶然だ、驚く程に



そういえば、と思い少し小さめの声で足立さんに尋ねる


この喧騒の中小さい声で聞く必要はないんだけど、なんとなく



小声で、どうやって入ってるの?と、尋ねると



お姉ちゃんの学生証借りてる


と、悪戯っぽく笑う足立さん



同じだ、と僕も笑って返す



「そいえば十条君、学校と随分雰囲気違うよね?

髪セットしてるのもあるけど、その、それ腕のタトゥーとかちょっとびっくり」



興味津々といった顔で問いかけてきた



「いや、これは、、うん。違うんだ」



「違うって、、なにが違うの?」

クスッと、笑うように僕の挙動不審な返事にクエスチェンマークを浮かべる足立さん



「髪はバイト先が飲食店だからちょっと前髪上げるのにセットしてて、この腕は兄貴がバンドマンで彫り物入れてて、その影響で音楽を色々と聴くようになって、なんとなく彫り物に興味を持って、、同意書書いてもらってつい。。。」


ちょっと気まずいものがあり視線を逸らしながら僕は答える


長袖を着てこれば良かったなと今更思う


バイト先がとても寛容で、仕事中制服で隠してればとやかく言われないのもあり

先週から少し気温が上がってきてるのもあって、半袖で出てしまった事を悔やむ



まさかこんなことになるとは思わなかったし、うっかり、、、いや想定しようもないしうっかりでもないか



「足立さんも、学校と雰囲気全然違うよ?驚いたよ」


ダークブラウンの髪を、学校で見るストレートとは違う、ふわりと巻いて大人びた化粧をしてるのか印象が全く違う足立さん


知らなかったらパッと見で、20歳くらいに、成人してそうに見える


「そう?まあでも学校じゃぁ比較的優等生ですからねっ。ちょっと学校とは違って見えるかもね!ちなみに明日は急遽風邪を引いてお休みする予定で今日バイト帰りに来たんだよっ」


足立さんは得意げに言った


いやそれ優等生じゃない。


そしてほんとに急にフラりとバイト帰りに来たと、改めてなんて偶然なんだとしみじみ思った


お互い1人来たから、連れが来てそれじゃあまた、、、と手を挙げて別れていく展開にもならず閉店まで話し込んだ


クラブを出て、近くのホストさんのアフター御用達の個室のうどん屋で食事をして、その足でなんとなく2人でそのまま行動した


駅前方面に向かい深夜でも人で賑わう某量販店をブラりとし、駅前を歩く


「こんな平日の真夜中に来て眠くないの?」

足立さんは訊ねてきた



「いや、全然。普段平日でもこの時間結構起きてるし。」



一瞬、彼女の時が止まった



「あんまし寝れない人?」


ぽつりと零す彼女


少しだけ影を感じたその一瞬


うん、まあと答えると「---同じだ」って小さく驚いた


同じって?、、と口には何故か出来なかった


なんとなく急に来たのはもう分かってる


そのなんとなく、と、急にの部分に


足立さんも眠れないし、だから来たって事?

その疑問を投げそうになるも、なぜか口に出来なかった


そ、そうなんだと少し詰まりながら返すと、返答はない


これ以上追求しない方がいいなと僕は判断して何も言わなかった



終電も無い時間、お互い1人だし、どうすればいいものやらという空気感

それを感じてるのは僕だけかもしれないけれど



「足立さんはそういえば何処に住んでるの?」


帰れるかどうかを一応気にして僕は問いかけた


「あたし?港区から来てるよー。バイト先はこの近くのカフェだけど」


「え、まあまあ遠いじゃん」


「そー、だから始発まで結構時間まだあるんだよねー。十条君は?」


「僕は北新宿だよ。」

歩いても帰れるし、タクシーでも近い


少し悩んだ、朝までどうしよう



一緒に朝まで居る理由もないけど、彼女を1人朝まで放置して帰る訳にもいかない



かと言って特に入る店も特にない




「そーだっ!十条君ち、行ってもいい?朝には帰るからさっ」


軽い口調で足立さんは聞いてきた




真夜中に女の子を家に上げるのは抵抗があるけど


かと言って、おいてくわけにもいかない



都合的には特に断る理由はない


夕方バイトがあるけれど、それまで特に何かあるわけでもない


学校は僕もどうせ明日は休む考えでいたし


「え、うち?まあ僕ひとり暮らしだし特に問題ないから大丈夫だけど」


一応、親がいない事をそれとなく伝える




「じゃあ行こー!もっとお喋りしよ!」


意に介さずテンション高く足立さんは右手を上げた


ほんとに学校とイメージ違うな、、、。



タクシーを拾って北新宿の僕が一人暮らしする家へと向かった



不思議な感じがする



ほぼ接点のないクラスメイトの女の子と平日の真夜中に新宿で遊んで、僕のうちへ向かう


いやほんとに全くよからぬことなんて考えてないけど、軽く突然訪れた非日常に僕は不思議な感覚を覚えた





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