第8話 虫の居所
ウメコ・ハマーナットはかつて所属していた捕虫班<レモネッツ!!!>で、大量連鎖
ウメコは謹慎期間中しばらくは虚脱感に何もする気が起きず、トランスヴィジョンタウンを覗けば、あちこちで、非難ゴーゴーの雨アラレ、頼みのウィキッドビューグルも姿を見せず、さすがのウメコもしょげかえり、その間、体重を5kgも増やし、鬱屈した毎日をおとなしく過ごしていたが、やがて元気を取り戻すと、今度は退屈をもてあましたあまり、うっかり隣のセグメント7区を超えようとして、連合当局からこっぴどい指導をうけたりなどして、せっかく上向いた調子も一気にダダ下がったりしたものの、なんだかんだで次第にノンコ気質をも取り戻し始めていった。そんな中、ひょんなきっかけで知った古式捕虫術「
謹慎期間がまもなく明けるという頃、やはり所属していた<イデムシ・クラックワークス社>を解雇された班長のイーマ・ミ―マ=ザッカ―モッチが、<エクスクラム!!!>の要請を受け、「いつか再び、ひっくり返そう!」を合言葉に、<レモネッツ!!!>のシンボルマークでもあった「!!!」を逆さにして涙に見立てて命名した<レモンドロップスiii>として8班を復活させたのだった。ウメコもその再結成の起ち上げに参加し、いまに至る。
レモネッツ!!!時代を振り返れば、楽しい思い出ばかりだ。けど、後ろを振り返っているばかりでは、前は見えない。あたりまえさ。騒動直後は、失敗を忘れたいがために、さらに昔の日々へ思いをはせ眩しさに目をくらませていた。前を見る、それだけでいいのに、そんな簡単なことができないのだから、ふさぎの虫というのはやっかいだ。
いつまでも過去の失敗にとらわれていてもしょうがない、といまではウメコもすっきり思えた。なにが起きるのかわからないのが人生らしいし、たかが一歩先を占って、破裂を怖れるあまり慎重におそるおそる足を運んだところで、そこに虫がいるかいないかなんて、そんなものは連合の虫予測よりあてにならない。お行儀よくしてたらしてたで、癇癪の虫はいつも目覚ましを食らったようにきまって誰かに起こされる。まったく虫の居所というやつ。こいつを狙って、いつどこでしくじりの虫が網を張って待ってるか知れない。虫の居所に巣食う虫は、知らず知らずのうちに目の届かないところに育つという。たぶんそいつは、ティンカーズセンスの高揚で跳ねあがった髪の中にでもじっと
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