第3.5話

 昔々……っていってもせいぜい20年とかそれぐらい昔だけど、あるところに、仮に太郎くんとするけど、とっても綺麗な男の子がおりました。太郎くんの美貌は生半可なものではなく、出会ったもの全部を狂わせるというか、実の両親をも狂わせてしまうものでした。太郎くんは父親と母親、両方から虐待を受けていたんですね。性的な。


 時は流れて太郎くんは14歳。両親からの虐待に耐えかねた太郎くんは、ついに自らの手でまず父親を、次に母親を殺してしまいます。内臓をぶちまけた死体に囲まれた太郎くんは自ら警察に通報し、血塗れの部屋にぼんやりと佇んでいました。

 すると、ノックもなく家のドアが開き、殺人現場と化した寝室にある男が現れました。その男は借金取りでした。太郎くんの両親はやくざに多額の借金をしていたのです。

 現場をひと目見た借金取りは言いました。


「おまえのせいじゃない」


 太郎くんの家庭が壊れたのは、太郎くんが美しいせいではなかったのです。

 借金取りは速やかに「専門」の仲間に連絡を取り、警察が来るより先に部屋を綺麗に片付けてしまいました。そして、相変わらずぼんやりしている太郎くんを連れて、家を出たのです。


 太郎くんはその後新しい名前を与えられ、やくざになり、人を殺したり、殺した後の始末などたくさんの技術を身につけて、借金取り兼殺し屋の跡を継いだのでした。めでたしめでたし。

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