異世界職業斡旋所 【あなたの能力を違う世界で役立ててみませんか】
モモん
タイムリーパー
第1話、時をかけるお姉さん
「あのぉ……」
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「特殊な能力を持っていると、仕事を斡旋してもらえるって聞いてきたんですけど」
「はい。
犯罪履歴はございますか?」
「ありません」
「でしたら、こちらの用紙にご記入をお願いします」
「犯罪履歴があるとダメなんですか?」
「内容と能力にもよりますが、犯罪者でもかまわないという企業さんもおられますので、詳細を確認させていただくことになります」
「はあ。
はい、書けました」
「えーと、時任カオル様ですね。
年齢は21歳。現在はフリーター。
能力はタイムリープで、過去方向にだけ3時間以内ならジャンプできる。
未来はダメなんですね」
「はい。ですから戻った分だけ実年齢を重ねてしまいますので、肉体的には25歳くらいだと思います」
「えっと、タイムリープの求人は……」
カチャカチャカチャ
「あっ、こちらは如何ですか。
警察の遺失物係で、基本給30万円。
長期契約可能で、案件発生につき1時間1万円の別手当支給。
制服と交通費は支給されます。
更に、大事件・大事故を未然に防げた場合は、一件10万円の特別手当が付与されます。
希望者は寮へ入居することも可能ですね。
公務員ではなく、特別契約社員となりまして、実績次第では公務員採用もありうるみたいですよ」
「そ、それお願いします。
親が安心しますので」
「はい、承知いたしました。
では、明日10時に準備してお越しください。
もし、引っ越しが必要なら、異空間転送も可能となりますが、こちらは別途実費を頂戴します」
「着るものだけなので、引っ越しは不要です。
あと、寮の手配もお願いします」
「彼女、多分ゲームのリセットで相当能力使ってますね。
実年齢30超えてるんじゃないでしょうか」
「別に、ゲームで遊ぶだけなら犯罪じゃないぞキララ。
ほれ、プライバシーへの関与は規則違反だぞ」
翌日、私は外商部のトコウニさんって人に連れられて、とある世界の警察にやってきました。
「これ、僕につながる専用の携帯だから、契約上のことで何かあったら連絡ください。
どうしても、元の世界に戻りたいときにも使っていいですからね」
「はい。ありがとうございます」
「それから、赴任にあたって、現金が必要でしょうから、支度金を支給するよう交渉しておきましたからね」
「本当ですか!
お給料までどうやって過ごそうか悩んで、インスタントラーメンを30袋持ってきたんです」
「まさか、スーツケースの中って……」
「ラーメンと下着くらいしか入ってないんです」
遺失物係の係長さんが署内を丁寧に案内してくれました。
支度金10万円と、身分証明書。それと寮の鍵をいただきました。
今日は入寮書や契約書などの必要な書類を書いて終わりです。
寮は隣の建物ですので、交通費もかかりません。
業務で公共交通機関を使う場合は、身分証明書の提示でOKだそうです。
早速、銀行へ行って口座を作ります。
お給料も、その口座へ振り込まれるそうです。
翌朝、ラーメンを食べて出勤します。
勤務時間は8時30分から17時20分まで。
朝礼で三富紀(ミトキ)署長さんから皆さんへ紹介していただきました。
「この度、遺失物係に配属となった時任カオルさんです。
タイムリープという特殊能力をお持ちで、3時間まで時を遡ることができます。
彼女の力を必要とする場合は、それぞれの課長の許可を受けてから坂登係長にお願いしてください」
「ご紹介いただきました時任です。
不慣れなものですからご迷惑をお掛けするかもしれません。
よろしくお願いします」
何もない時には、遺失物係の窓口に座っています。
ただ、普通は近くの交番で届けますので、本庁へ来る人なんて稀です。
何もない時には、過去の遺失物届のデータ確認して、役に立てそうな案件をチェックしていきます。
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