第6話 初めての狩り

 ステータスの下準備を終えてから二年と少し経った今日、俺は一人で村の近くの森まで来ている。

 勿論魔物を狩りレベル上げる為だ。


 一応現在のステータスはこんな感じになっている。



名前 シルヴァン  職業 翻訳通訳士


レベル 8     

体力  158/158 

魔力  69,019,855/ 69,019,855

攻撃力 169     

防御力 169    

敏捷性 198     

精神力 171    

運   200    

        (未割り振りポイント55)


称号

 【超大物喰らいジャイアントキリング


▼スキル

 [風魔法Lv1][水魔法Lv1][身体強化Lv2][魔力操作Lv1]

 [翻訳Lv1][通訳Lv1][魔力消費]



 やはり魔力の数値だけバグってるな。

 他の数値も上がってはいるのだが魔力とは比べものにならない。

 とは言えこのステータスであれば魔物を狩るには十分。


 その為に二年もの間待っていたんだ。

 流石に三歳児の肉体で更に当時のステータスでは一人で魔物を狩る事は出来なかった。


 何故一人で魔物を狩る事が前提なのか?

 それは俺が翻訳通訳士という非戦闘職であり、しかもまだ子供であるからだ。

 魔物を狩るのは決して安全だとは言えず、最悪命を落とす事だってある。


 そんな危険な行為を非戦闘職で子供の俺に対して許可してくれる大人が居るはずがない。

 なので俺は両親を含めて村の人に何も言わず秘密裏にここまで来ている。


 とは言え俺もこの二年間何もしていなかったわけではない。

 10レベルまではほぼ全ての行為によって経験値が得られるのを利用してレベルを上げたし、この森で狩りを行っているサイラスさんに積極的に話を聞いてどんな魔物が出現するかの情報も集めておいた。

 

 その結果この森には基本的にゴブリンとコボルト、更に額から角が生えているホーンラビットとの三種類しか現れないという事がわかった。

 その結果を考慮してなお大丈夫だと判断したからここに来たのだ。


 と、そんな事を考えていると川辺に座り込んでいる三体のゴブリンを見つける。


「丁度いい」


 こちらに気づいてないみたいだから俺の魔法が通用するかどうか確かめさせてもらう。

 俺はそう思いながら右手をゴブリン達の居る方に向かって突き出す。


 この世界の魔法は基本的に呪文の詠唱等はない。

 必要なのは想像力。

 それなのに魔法スキルにレベルが存在しているのは、レベルごとにこの世界に具現化できる現象に制約があるからだ。


 そして今俺が所持している魔法スキルはLv1。

 Lv1で出来るのはせいぜい拳大ぐらいの現象を具現化するのがせいぜいだ。

 だが拳大といっても形状は想像次第。


 そして威力は魔力を注げば注ぐほど上がる。

 つまりバグったような魔力量を保持している俺には、例え拳大でも十分という事だ。


 適性が無いという事で発動時の消費魔力量は倍必要だし、注ぐ魔力量も同等に適性のある人間より必要だ。

 だがそれでも尚戦えるという事を今証明するんだ。


 俺はそう思いながらビー玉サイズの水の玉を三つ生み出す。

 そしてそれに魔力を注ぐ。

 それぞれ1,000ぐらいでいいだろう。


「……フゥ~」


 後は狙いを頭に合わせて……行け!!

 その直後水の玉が凄まじい勢いでゴブリンの頭に向かって飛んでいき、ゴブリン達が反応する事も出来ず見事頭を貫通する。


「不味い!!」


 俺は即座に発動していた魔法を強制解除する。

 俺の視線の先には水の玉に貫かれた木々が幾つか確認できる。

 ゴブリンの頭を貫いて消えるようにしたつもりだったが、どうやら魔力を注ぎ過ぎてそれが上書きされてしまったようだ。


 あのまま放置していたら一体どこまで飛んで行っていた事か……

 考えたくもない。

 だがよく考えればそうだ。


 たかが水の玉にいくら魔力が倍以上必要だと言っても、500も300も注ぐ魔法使いは居ない。

 これから注ぐ魔力について色々検証して、威力を制御できるようにならなければ。


 でないと俺は間違って人を殺してしまう可能性がある……

 それだけは絶対に回避しなければ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る