第4話 超大物喰らい

 【超大物喰らいジャイアントキリング】。

 この称号を取得、あるいは認知している者はまず存在しない。

 理由は簡単。


 取得難易度がとてつもなく高いからだ。

 例えば下位の称号であり、表記は違うが呼び名が同じである【大物喰らいジャイアントキリング】。


 その取得条件は、自身のレベルより30以上上の相手に1対1で勝利する事。

 ステータスが絶対のこの世界において、自身よりレベルの高い相手に勝つことは至難の業。


 だがそれに見合うだけの効果が【大物喰らいジャイアントキリング】にはある。

 その効果はレベルアップによって得られる能力値が2倍になり、更にレベルアップによって得られるスキル及び能力値ポイントが+30される。


 因みにスキル及び能力値ポイントというのはその名の通り、スキルを獲得するのに必要なポイントであり、能力に自由に割り振れるポイントでもある。

 そのポイントは本来1レベル上がるごとに5ポイント、5レベル毎に更に5ポイント、10レベル毎でも更に5ポイント追加で獲得できるという設定だ。


 なのでレベル5の時に獲得できるのは10ポイントであり、レベル10の時には15ポイント獲得できる、といった感じだ。

 それが1レベル毎にプラスで30も手に入るとなれば、その恩恵は計り知れない。


 とは言え【大物喰らいジャイアントキリング】の取得は上を目指すものからしたら常識であり、強者は自然と持っている物。

 それはいずれ、この世界のも例外ではない。


 元々ぶっ壊れな物を幾つか持っている主人公に、、この称号まで入手されれば超えるどころか並び立つ事すら不可能だ。

 だがそれを唯一可能にし得る可能性がある称号……それが【超大物喰らいジャイアントキリング】。


 その取得条件および効果は、下位称号の【大物喰らいジャイアントキリング】とは比較にならない程高難度で強力だ。

 まず取得条件。


 それは、自身がの時に自身より以上上の相手に1対1で勝利する事。

 更に追加条件として、心の底からの真剣勝負でなければならない。


 これは下位称号である【大物喰らいジャイアントキリング】にも言える事だが、格上の相手と示し合わせれば簡単に入手出来てしまう。

 それを避けるために考えた設定だ。


 つまりどちらの称号も、例え前者の条件を満たしていても相手が負けてもいいや、や負けても仕方ないと考えている相手に勝ったところで取得する事は出来ない。

 更に真剣勝負……つまり、相手と全く同じ条件でなくてはならないのだ。


 故にその条件で唯一クリアできる可能性があった、ルシルスと勝負したのだ。

 彼女は子供だろうと甘く見ないし、油断しない。

 そして約束は守る人間だ。……正確にはエルフだがな。


 とは言え、それだけなら他にも選択肢はあったし候補もなくはなかった。

 だがレベルが1でも上がれば条件を満たせない為、人生において最初の一回限りの勝負。


 何せレベル差が200以上となれば例えどんな勝負であろうと、最低でも1レベルは上がると考えられたためだ。

 実際命を賭けた戦いの方が得られる経験値は多く、こういった遊びの範疇の勝負ではえらる経験値がかなり低いのだが、俺はレベルが3も上がっている。


 勿論この程度の事で経験値が入るのはレベル10までだ。

 これは所謂初心者に対する救済処置と言ったところだろう。

 だがそれ故に絶対に勝たなければならなかった。


 だからこそ彼女だったのだ。

 彼女は大事な場面や、これといった勝負どころでは絶対最初はパーを出すと決まっていたからだ。


 なにせ最初にグーを出す人間が多いため、それに勝てるパーを出すという設定に俺がしたからだ。

 そう言う設定にしたのにも多少の理由はあるのだが、今はいいだろう。


 それよりも問題なのは称号より与えられる力だろう。

 【超大物喰らいジャイアントキリング】その能力は……レベルアップによって得られる能力値が14倍になり、更にレベルアップによって得られるスキル及び能力値ポイントが+200されるという、ぶっ飛んだ称号なのだ。


 しかしながらこの称号をもってしても主人公に届き得るか……正直怪しい。

 俺の職業が悪いのは勿論だが、それ以上に主人公の持つ力は絶大なのだ。


「……考え込んでるとこ悪いが、見てわかる通りアタシは気が長い方じゃないんだ。さっさと話を進めてくれるか?」

「! すみません!!」


 俺はルシルスさんの言葉に勢いよく謝罪する。

 あまりにも嬉しくて、つい手に入れられた称号についてばかり考えてしまっていた。


「そんな謝罪は良いからさっさと坊主の言う事ってのを早く言いな」

「……僕からのお願いは、5年後の今日……正確には一日前から今日のお昼にかけての間、この村に滞在して頂く事です」

「それとフェリシアの生死に何が関係あるってんだい?」

「……その時になればわかります」


 俺の言葉にルシルスさんは何も言わず、ただ俺の目を見つめてくる。

 嘘をついてないか探ってるって感じかな?

 まぁこれに関しては嘘は言ってないから、何の問題もない。


「真偽は兎も角、約束は約束だ。坊主の言葉に従ったげるよ。認識としては5年後のフェリシアの誕生日の前日からこの村に滞在するって事でいいだな?」

「はい」

「これ以上話す気はないんだろう? ならさっさとフェリシアの所に行ってやんな」

「……わかりました」


 俺はそう答えソファーから立ち、フェリシアの居る外へと歩を進める。

 あのルシルスさんの目と雰囲気……

 アレは確実に俺の言葉を信用していない感じだ。


 まぁ知人の娘であるフェリシアの生死に関係すると言われて話を聞けば、5年後にこの村に居ろなんて言われたんだ。

 俺なら意味が分からないし、疑わずにはいられない。


 恐らく、ルシルスさんは俺の周辺を探ってくるだろう。

 勿論、やましい事など一つもないから探られて困る事などない。

 彼女が5年後にこの村に居てくれる。


 その保険が達成されるのならば、監視されるなんてことはへでもない。

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