第6話 アイナ熱弁

アーネに入るのにほんの数分ほどしかかからなかった。なんと言っても自身が奴隷となる前後共に見たことある街の入口よりも圧倒的に広い。私の出身は『レゲアノ』と『ダレーゼ・オレーゼこく』の国境付近のちょっと大きめな街の出だがこんなに横広な入り口は見たことがない。攻め入られたら大丈夫なのかとか色々問題あるような入り口である。


「入り口広いですね。なんかこう、外からの人を迎え入れているって感じですね」


私は街に入ると彼女にそう言った。そうすると彼女は笑顔になってこういった。


「私が考案したんだ、回収工事あるなら全回収しないって?元々コレジシア自身危険地帯が多くて他国も攻め入って領土手に入れても管理がはかどらない場所だし、むしろ他国の危険地帯の最前線に人手や物資を支援もしてるから、相手としてもヘマして領土とか手に入れそこねた場合、損害出るのは大半自国だから。デメリット多いのよ。この国に攻撃仕掛けることが。だから入り口デカくてもいいじゃんって感じ。あとちゃんと対策もしているしね」


彼女はなんか知らないが自分が関わっていることになるとかなり自慢したがるフシがある。何というのだろう…かまってちゃんな子供な感じがすごい。


「どれだけ国に貢献しているんですか?」


「王宮内で下着で走り回れるぐらい!」


満面の笑みでそう答えてくる彼女に私はなんかイラッと来たのとありえない、ソレは絶対ウソだっていうの重なってしまい言葉でツッコミが思いつかずビンタをしてしまった。痛そうな音が馬車内にひび…きはしなかったが、ビンタされたアイナさんは涙目である。


「私達の前で冗談は程々にして下さい」


別に私の方が偉いわけでも無いが、彼女にはもっと現実味のある話をしてほしいというところがあったためまあ、後悔はしていない自分がいる。奴隷なのに主人に手を上げてしまったが、手を上げて良いと言ったのは彼女自身なので、お咎めは無いはず…。

その後少しの間いじけていたが、馬車を降りる頃には普段の彼女に戻っていた。それにしても最近彼女はより子供っぽさが強くなった印象がある。最初の頃のなんとなくあった大人感は完全に消え去っている。まあ、ちゃんとするときはちゃんとしているのだが…。


「はあ…」


「どうした?」


「なんでも」


考えていたらため息が出てしまったようだ。


「取り敢えず風呂入りましょうね」


「…はい」


そして最近はアイナさんの面倒を見ている私がいる。彼女最初こそちゃんとしていたのに私達がしっかりし始めるとともにだらけ始めたのだ。今では着替えも言わなければ着替えるの忘れるレベルだ。そして、今回の旅、かなり時間がかかったが理由としては周辺国の環境調査を少しだけやっていたとのこと。まあ、収穫はなかったらしい。そのせいで村にすら寄れなかったのだから。




「あーいいお湯」


「そうですね~」


「…」


アイナさんを中心に右側に私、左側に女の子を入り口と対面する形で風呂に浸かる。


「最近随分図々しくなったね」


「あなたがしっかりしていて厳しかったら、図々しくしませんよ」


「私の責任か」


「そうです」


「うるさい」


「「…」」


私達が喋ってると女の子がうるさいと、黙らせてきた。もちろん理由は簡単で風呂に入ったら疲れが出て眠くなったのだろう。その後私達は一時間ほど風呂で疲れを取り男の子と合流したのだ。


その後買い出しをする。買ったものは短期間で食べれるものが多かった。後は服などの買い足し。旅でボロボロになったものはタオルなどに再利用するとのこと。そんなこんなで男の子がまた荷物持ちに。

買い物が終われば移動するのは街の隅に密集する鍛冶屋がある一角の倉庫だった。馬車のおっちゃんも馬車から荷物をおろして最後にお金を渡すと、挨拶をして去っていった。


私達はアイナさんに続いてボロボロな倉庫に入る。ただ外見がボロボロなだけで中は以外にもかなり綺麗だった。光源魔道具を起動させルト部屋の中にはこの世界の技術とは全く異なるであろうあれがあった。


「くる…ま」


私がその言葉を口出してしまったと同時にアイナさんがこっちをちらっと見て一瞬微笑んた。まるで何かを見つけた時の喜びを一瞬見た気分だった。


「コレで移動するわよ」


「え?え?」


私も他の皆も困惑である。ソレとはお構いなしにアイナさんは喋り始める。


「やっと使える日が来たわ…私もう4百年もコレに関して研究し続けて来てやっと完成したときは涙がこぼれそうだったわ。なのにバカ女神があれこれ言うもんだからそっちに興味持ってかれて結局そっち優先しちゃったじゃない。でも、でも!やっとソレも終わって今日、やっとあなたを使えるわ!興奮しすぎて下濡れてきたけど木にしない。ああ、このボディ!ふつくしいでしょ?私の選抜した選りすぐりの設計士と職人によって細かく設計整形されて重さと形状と強度をを今ある技術を駆使して最大限突き詰めて、ベースとなるラダーフレームも何百個と設計して試作して失敗して再利用したり材質変更したり、結局ダメで材質の研究も始めて、副産物は大量に出るのに欲しいものは全然手に入らずボディーだけで百年。そして同時進行だったエンジンに関してはロータリーや、直接魔力で推進力を得られる機構、そうモーターみたいなやつとか色々試したけど、やっぱり単純で燃費もそれなりに出て整備とか簡単なレシプロ型担ったのよね。そして魔力伝達を正解に制御するために色々と試した結果、魔力制御機構は大型化するし、小型かも大変だったわ!エンジンはツインカム式の4サイクルで直6の約5Lツインターボ化して燃料は魔力だけで内部で爆裂術式を発動して動力を得るのも大変だったわね。爆発させる魔法だからなかなか燃焼方向に魔法特性を制御するの大変だったし、回転数を上げるために出力を上げると容赦なく爆発するもんだから術式の再構築し直したのはいい思い出よ。そして動力問題。魔石を魔力タンクとして利用していけど、魔石から魔力出しすぎると魔石炭になって魔力貯められなくなるから限界まで絞り出さないように制御しなきゃいけないのよ

でも一個だけならまだしも何百個って数乗っけてるしそれぞれ個体差あったから数も集めなきゃいけない、選別もしなければいけないで大変だったわ。でも元々そういったインフラ設備はある程度充実していてくれたおかげで基礎はある程度できていたから研究も開発もかなりスムーズだったわね。でも既存品の効率化とか小型化ってそれなりに難しいし、新たなアイデアも必要だから余計大変。でも、おかげで魔力バッテリーもできたしかなり楽になったわね。街の人達の生活は。それにしてもエンジンとトランスミッション周りは本当に難しかったな。機械式では限界があるし制御装置の小型化や小魔力化とか効率や安全性安定性全てに気を配っていかないととてもまともな物作れなかったし。特に点火時期や加給に応じての制御はセンサーとかなかったから余計よね。電気とかもないし、半導体なんていう便利な物も入手はまだ難しいし、素材の性質も違うからそれらの研究もいるというもう全部1からやらなければならないから大変だったわね。まあ、全部私がやったってわけじゃないし一緒に研究してくれてた人たちはとても優秀だったのはたしかだね。あ、私が優秀じゃなかっただけか。にしても魔力術式制御基板開発した彼のおかげでコレがあるようなものよね。前まで柔軟に制御することなんてできなかったもの。フィードバックシステもを実装できたのも彼の制御基板のおかげだもの。まあ、ソレを使いこなせた人たちもすごかったわね。特に魔力供給周りの制御はかなり複雑だもの回転数に合わせてガンガン魔力を必要とするからその分出力も上げなきゃいけないし、出力多かったり少なかったりすると爆裂術式発動させる装置おかしくなるからね。しかも常に展開している硬化魔法とか、物理防壁とか魔法防壁に関する魔力もソレで制御していたのよね確か。衝撃が増えれば防壁はもちろん魔力をガンガン消費するからソレに合わせて瞬時に出力をはね上げる制御をできるようになったのもそのおかげだし。

 それにしても…は~!!!このボディすごいわ!この綺麗な曲線。さすが職人!私みたいなド素人とは比べられないわ。これだけ手打ちとはわからないぐらいに整形できるのだもの。そしてこの足回り、全て独立サス四輪駆動。このThe SUVて見た目を考えてくれた彼もさすが。私の言葉をイメージとして書き出せる彼は間違えなく優秀だったわ。もう居ないけど。そして…」


と彼女は車について話していますが、要約すると…


天才すごい。SUV強い。ほぼ全部基礎研究から始めてここまで来るのに4百年かかた。すごいでしょ?!


ということでしょう。コレがオタクですか。そうですか。そして二時間半も彼女の自慢トークを聞くことになったのだった。時代にあっていないその車は彼女の指紋で汚れたのは見なかったことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る