奴隷だった私を買った変人たち

@kokumozu

第1話 奴隷・購入・挨拶

 何日私はこの牢屋に居るのだろうか。もちろんトイレなんて無い。半年買い手が付かず、売れる見込みが無くなる者は定期的にトイレすらいかせてくれなくなり最低限の食事が投げ込まれる今の私のような扱いになる。私は…いつ…死ねるのだろうか…。

 飯が放り込まれれば死にたいのに…死にたいのに食べてしまう。私は死にたいはずなのに…。お母さん…なんで私は生き残ったの…。なんで私は生きようとするの…。前もそうだった。


一人ハエが飛び交う牢屋の中、朝日も月光も入らない部屋の中で彼女は聞いた。


「お客様、そちらはあまり質の良くない物しか無いのでおやめになったほうが…」


「いいじゃん、いいじゃん。掘り出し者居るかもしれないじゃん」


駆け出しの冒険者や荷物持ちに使い捨ての奴隷を買いに来る討伐者以外にほとんど人が来ること無いこの汚い牢屋がある部屋に、綺麗な軽装な桃色のドレスを着た女性が入り口に居た。彼女は部屋を見回すと、私の牢屋とは反対側に先端が灰色の尻尾を揺らしながら歩いていってしまった。


「この子キープしておいて」


「わかり…ました」


二人の声が聞こえた。また歩く音が聞こえる。入り口から男二人が入って来て奥に早足で歩いて行くのが見えた。そして牢屋を開ける音。そして中から引きずり出してる音が聞こえる。そして…


「この子もキープしておいて」


私の前まで来て、私のことを指差し、また他の牢屋に歩いていく。私は先程入ってきたと思われる男たちに牢屋から引きずり出され、まともに自身の体重を支えられない足で立たされ、奥で引きずり出されたと思われる男の子の後ろに首と両手を長めの鎖で固定された。


その後彼女は他の牢屋も見て回ったが、特に他の子を選ばず「じゃあ向こうで選んだ子も入れて三人でいいわ」と言っていたのが聞こえた。



その後私達は部屋で匂いがほとんどしなくなるぐらいまで綺麗に体を洗われ、ヒールで体の傷を。クリーンの魔法で匂いを消された。軽食を軽く取らされ奴隷商の出口に運ばれた。するとそこで


「合計で15億700万マフです」


「じゃあ、マフカード一括で」


「かしこまりました」


という会話をする二人の姿が目に入っった。


「どうぞかざして下さい」


そう言われると彼女はよくわからないが薄い板を光る色々書き込まれた白っぽい石にかざして


「まあ、30億マフ送金」


「え?」


そう言うと白い石が淡く青色に発行し『シテイキンガクをこえていますが、よろしいですか?』と表示された。彼女は迷わず「お釣りはいらないよ?」と言って『しはらう』を押す。奴隷商人は思わず出てしまった言葉をごまかすかのように


「本当によろしかったのですか?」


という。


「いいのいいの。ちゃんと過剰支払い分は奴隷たちに使ってね」


「はい。本日はご購入ありがとうございました。アイナ様。これからもどうかご贔屓に」


といって私達は私達の繋がれた鎖を持った男の人の手を離れ、彼女…アイナと呼ばれた女性に鎖が渡った。


「じゃあ、あなた達は今日から私達のだからね?」


コレが私と彼女の出会いだった。



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  私達を馬車に乗せ、鎖を外た。逃げ出すということは考えなかったのだろうか。その後すぐに「あ、コレ食べて」と言わんばかりに瓶を渡してきた。しかし、私達の中には蓋を取れるほど力のある物は無い。最初は彼女はなぜか不思議かっていたのか口に食べ物を咥えたまま「aaそnnka」と言って瓶を握りつぶした。蓋…もちろんガラスが散らばるが中身を取り出したあと、彼女は魔法で瓶を割れる前に直し、私達に食べ物を渡してきた。魔力の無駄遣い。そして、久しぶりに食べる少し甘めの軽食だ。そんなこんな、少しおかしな彼女に買われた私は馬車の中で、盛大に乗り物酔いするのだった…。


2日が過ぎた。私の故郷『ダレーゼ・オレーゼこく』の国境に馬車は来ているらしい。元々居たところはダレーゼ・オレーゼこく外縁都市なのでかなり時間をかけて移動している。理由は簡単で私たちの体力面の影響だった。

私と一緒に買われた二人の子。特に少年の方は血色も良くなってきた。もうひとりの少女の方は…多分貧血なのだろうか。あまり顔色は変わらないと思う。当然私も私だ。いきなりほぼまともな食事も取れていないときにいい食事を摂ると体に良くないと言われ、少しずつ軽食に何かしら一品ずつ増えていっている感じなので仕方がないだろう。

そして今日は『ダレーゼ・オレーゼこく』外縁部、『ミレーネ・ムージアンこく』と『スーラーこく』国境に最も近い貿易中規模都市『オレのまちち』に泊まるとの事。その後彼女と御者の話を聞いていた限り、ミレーネ・ムージアンこく』に入り山地、山脈がある地域を避けて『コレジシアこく』の『アーネ』という中規模都市を目指すらしい。御者は国境付近の『ザバーネ』でなくて良いか聞いていたが、アーネに用事があると彼女は言っていた。まあ、早く馬車降りられれば私達はどうでもいいのだけど。どうせ、このあと殺されようがいたぶられようが性処理に使われようが、私達奴隷には当たり前のことだから。


「逃げないの?」


ここで今まであまり話さないようにしていたがあえて、ここで聞いてみた。奴隷同士の私的な会話は基本禁止されている。コレは奴隷契約術式を施されたときに強制的に制限される制約だ。だけど彼女は持ち主譲渡時に一時セーブモード(契約者更新状態)にされたまま一切契約を更新しようとしない。つまり基本的な契約以外は無効なのだ。つまり逃げることも可能。だからこそ一緒に買われた男の子に聞いてみた。


「無理…絶対い無理…。あれは…逃げられない。生きてる強さの次元が違いすぎる…」


小声で帰ってきた彼からの返答はソレだけだった。答えている途中にちらっと彼女の方を見た彼はそのままうずくまってしまい、体は小刻みに震えていた。街につくまでそのままだった。彼には彼女がどのように見えているのだろうか…



----------------



「街は居る前に奴隷の契約更新するね」


唐突に街に入るために門の待機列に並んだ途端の第一声がこれだ。


「並んでここに、横一列で」


馬車の中でなんというか…毎回違い人と話している雰囲気を感じる人だ。


「はい、そのまま動かないでね?」


そういうと彼女は左手を前に出し契約の呪文を唱える


「アイナ・ブルー・クライスの名においてこの三人に奴隷の契約を。いかなる時も家族のように接することを条件とする」


思わず契約中の彼女の言葉に私は思わず驚く。奴隷にこのように契約するものなど、ほとんどいない。しかし、する人も居るが、それはもっと高い奴隷にするような契約だ。私のような安い奴隷に行われるような契約ではない。なのに…


その瞬間契約が成った。私達四人を囲むように青い光が私達を覆う。一瞬髪の毛がふわっとなり、光は消える。


「これからよろしく」


これが契約完了と同時に聞いた彼女の言葉であった。

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