火の龍神
気がついたら,草ぼうぼうのジャングルの中に立っていた。
周りは,何処までも,空まで高く伸びる木がそびえたつ。さっきの雪の世界とは違い,虫の音や鳥の囀りなど,常に何らかの音がしていて,ざわざわしている。ジリジリと照りつける日光は,木の葉っぱに遮断され,ジャングルの中は,涼しく感じる。
辺りを見回し,キョロキョロしていると,空から,明るい顔をした龍が降りて来た。身体は,太陽のようにギラギラと光る黄金色で,目は,炎のようだった。
龍は,すぐに,風太と目を合わせ,尋ねた。
「おまえは,誰や?」
「名前は,風太と言います。」
風太は,緊張した声で答えた。
「名前は,どうでもええ。おまえは,誰やって,訊いとるんや。」
風太は,自分が何を訊かれているのか,よくわからなくなり,口籠ってしまった。名前以外に、一体,何を言えばいいのだろう。
風太は,答える代わりに,龍に尋ねた。
「あなたは?誰ですか?」
「俺は,火の龍神や。」
龍は,即答した。
「…どうして,火の龍神になったのですか?」
風太が訊いた。
「火の力は,諸刃の剣や。ものを温めたり太陽を光らせたり出来るんやけど,大きな危険を孕んどるのや。火事の破壊力を知っとるかい?俺の力は,取り扱いに注意が必要や。
そういうところに,惹かれたんやなぁ。
でも,どの力もそうや。誰も,良いエネルギーと悪いエネルギーを持っとる。そのエネルギーをうまく使えば,人を励ますことになるが,使い方を間違えると,傷つけてしまうやないか。そういうことや。」
「じゃ,あなたは、龍神の中で一番強いですか?」
「いや,そんなことないんやで。だって,俺がこうして火をつけても,水の龍神がすぐに水を吐いて,消せるんやからなぁ。」
龍神が草に息を吹きかけ,点火させて,言った。
「それは,大丈夫ですか?」
風太は,燃えている草が気になり,尋ねた。
龍神がくすくす笑って,燃えている草を踏みつけて,火を消した。
「消せないんやら,最初からつけない。それも,大事や。」
火の龍神がそういうと,風太の目の前の景色がまた変わり始めた。鮮やかな緑色をした植物に生い茂られたジャングルが消え,群青色の空とふんわりとした雲が現れた。
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