恋できない女
米元言美
新入社員
雄二が友達の弘樹と行きつけの店で飲んでから,男二人で,夜道を歩いていた。
雄二は,長くて,辛い就職活動の末に,ようやく内定をもらい,翌日から近くの会社で勤務することが決まったから,二人で祝杯をあげてきたのだった。
「でも,ようやく決まって,本当によかったなぁ!また断られたら,就活なんか諦めて,ニートになっていたかもしれんなぁ。」
雄二が言った。
「そうだなぁ。何社受けたっけ?」
弘樹が訊いた。
「よくわからんなぁ…確実に30社以上受けたと思うなぁ…。」
雄二が言った。
「大変だったなぁ。」
弘樹が友達の努力を労うつもりで,言った。
「社会人って,こんなに辛いものだなんて,知らなかったよ。」
雄二が嘆いた。
「でも,決まったから…。」
「そう!これで,就職は決まったから,後は,素敵な彼女をゲットしないとなぁ…。」
雄二が屈託ない顔で言った。
「あの人,綺麗だね。」
弘樹が二人の前を歩いている女性の後ろ姿を指差して,言った。
「本当だなぁ。綺麗な人って,後ろ姿で,わかっちゃうもんなあ。」
雄二が前にいる女性に聞かれる声で,頷きながら,言った。
すると,前を歩いてる女性が,二人の会話を聞いていたようで,ぷんぷん怒った,真っ赤な顔をして振り向き,二人を睨みつけた。
「一体,何を勝手に言っているんですか!?散歩している犬を「可愛い!」というように,何も知らない私の背中を見て,「綺麗」と言って,「素敵な彼女をゲットしないと!」なんて,言って…女は,ゲットするモノでは,ありませんし,男の勲章では,ありません!
言っておきますが,まず,その認識から改めて,出直さないと,まともなパトナーを見つけるのは,あなたにとっては,一生無理ですね!」
女性が敵対心をむき出しにし,怒鳴った。
「そのつもりは,毛頭…。」
雄二がそう言いかけて,またすぐに遮られた。
「女は,犬ではありません。男の所有物では,ありません。態度を改めてください。」
女性は,何処までも冷たくて,素っ気ない口調で言い捨てるなり,雄二たちに背を向け,歩き去って行った。
「…犬のようになんて,していませんよ!」
雄二が気分を害して,女性の背中に向かって,怒鳴り返したが,女性は,反応しなかった。
「何、あの人…怖い!」
弘樹が呟いた。
雄二も、頷いた。
「やっぱり,後ろ姿で判断してはいけないなぁ…顔を見ないと。」
「いや,顔だけ見ても,ダメだろう。」
弘樹が言った。
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