第26話 世界樹の目覚め

 ◆異世界生活6日目◆


 朝起きると何故か『お父さん』

と念話が聞こえて来た

まあお父さんだから俺には関係無い

取り敢えず放置だな


朝食デッキに出て振り返ると


礼司)「ハアッ!!

何じゃアリャーーーーー!!」


俺が大声を出したもんだから

皆んなが慌てて外に出て来てしまった


何と北側の山の中に

高さ1000メートルくらい

横幅8キロくらいかな?

超巨大木が生えていたのだ


全員でお口をあんぐり開けていると

セバスチャンが教えてくれた


セバス)「アレはユグドラシルですな

詰り世界樹です

話しには聞いておりましたが

正に超巨大

意思を持つ植物の女王ですな

我が敷地内に生えるとは

流石はレイジ様!」


礼司)「そっ!そうなの!?」


セバス)「聖なる者の近くに生え

尚且今迄は絶滅したとされていました

此れは荒れますな」


礼司)「嵐が来るの?」


セバス)「いいえ強欲なる下種なる者達が

襲い掛かって来ます

葉っぱ一枚ですら相当な価値を産みます

レイジ様は聖賢者です

今は治癒師と申しておりますが

こりゃ世界にバレましたな

このセバスチャン一同

命を賭してお守り致しますぞ」


礼司)「そんなにも大袈裟なモンなの?

俺には全然ピンと来ないんだけど」


セバス)「無欲な英雄ほど

扱い辛い者は居りません

敷地を広げ

イヤ!

本来緩衝地帯からアヤメ家の領地です

其処から結界ですな

緑色ゴーレム

30万体召喚をお願い致します

直ぐ結界を張ります」


何か朝からエライ事になってしまった

俺が30万体なんて召喚出来るのかな?


神眼)『大丈夫です

それ以上の基礎魔力を創造神様から戴いておりますので

あと青色ゴーレム3万体

赤色ゴーレム1万体の召喚をお願い致します』


ハク)「妾達も付いておるのじゃ!!

ほんに面白うなって来たのじゃ!」


シルバ)「ガウッ!」


礼司)「イヤイヤイヤ!

俺、争い嫌いだから

何か違う方向に流れてる気がするーー!」


??)『お父さん

楽しそうだね』


礼司)『またお父さんだよ

おれ!未だ14歳の未成年!

だから子供はいないの!』


??)『間違い無く

お父さんがお父さんです

魔力をイッパイ注いで

私を目覚めさせてくれた

とても暖かい魔力で芽吹かせてくれた

やはり同じ魔力の香りお父さんです』


礼司)『えっ!?

魔力に芽吹かせる?

オイ!神眼!

世界樹って意思を持つと言ってたよな

若しかして此の念話は世界樹?

なにさっきから黙ってるの!』


神眼)『わたくしも驚いています

念話の方向は間違い無く世界樹からです

此れ程の意思を持つとは信じられません』


礼司)『ともかく種を植えた場所に行く

行けば何かが分かるかも知れん』


俺は転移を小さく繰り返しながら

世界樹を目指したが

道が何時の間にか出来ていたので

簡単にサクサクと進める

両サイドに花を植えたら

とても好い散歩コースになりそう


世界樹の種を植えた場所の近くに行くと

直径2キロ以上に育った幹が見える

そして近づけば近づく程

見た目は高さ100メートル以上は有る壁だ

高さ100メートルの木の幹だぞ

地球ならとても考えられん

此れが植物の女王の世界樹なのか

人智を超えた大きさだ


神眼)『北部の気候が安定しますね』


礼司)『そうなのか?』


神眼)『言伝です』


俺が世界樹に近づくと

『お父さん』と念話が聞こえ

上空から葉の付いた枝が幾重にも伸び

俺の身体が抱き抱えられ

上空へと持ち上げられてしまった

そしてとうとう世界樹の天辺に到着

周りに有った靄がいつの間にか消え去り

景色が一望出来る


礼司)『奇麗だ

美し過ぎる!

これは真に陛下では無いが

絶景かな〜だ!』

出張で現地に行った事が有るが

70年以上経った今でも何故か現地の年寄り連中が嬉々として教えてくれる自慢話だ



道を誰かが歩いて来るのが見える

拡大すると

セバスに抱えられたマルルとミルルだ


礼司)『なあ〜

マルルとミルルが来たら

セバス共々此処に連れて来れるか?』


世界樹)『大丈夫です

お父さん私も真名が欲しいです』


礼司)『おっ!好いぞ

そうだな〜………………………

ユグドラシルだから

ユルルだ

どうだ?』


ユル)『嬉しい!

今日から私はユルル』


やがてマルル達も天辺に到着

マルルもミルルも周りの景色に見惚れている


マル)「凄いのにゃ!」


ミル)「ちゅごいー!」


彼女達もこの素晴らしい景色を一生忘れないだろう

そして俺も忘れない

此の景色だけでも

異世界に来ただけの価値が充分に有る


名前を付けたのが良かったのか

ユルルが緑に輝くオーブを発生させた


マル)「ユルルお姉ちゃん奇麗なのにゃ!」


ミル)「ちれい!」


礼司)「ホントだ

まるで宝石みたいだな」


ユル)「お父さんマルルミルル

有り難う!」


礼司)「オッ!

オーブだと声が出せるんだな」


どうやらユルルはオーブになると

音声伝達が出来る様だ

流石は異世界の七不思議!


その後下に降りて

俺達が此処に通い易い様に世界樹の葉回りの外側を整備し

遊具を設置して公園にしてみた

要は日本の何処にでも有る普通の公園だ

此れにはマルルとミルルが大喜び


他に子供用マウンテンバイクを召喚し

セバスに手伝って貰い

二人には自転車に乗る練習をさせたが

二人はほんの五分程で乗り熟し始めた

流石は異世界人

運動神経もメチャメチャ良いのかよ

これで簡単にこの公園にマルル達が通える


そして公園の帰り道を広げ石材で舗装

両サイドには花壇にし

チューリップの球根を植えた

勿論雑草化を避けるべく球根の量は

抑え気味にした


礼司)『チューリップ油断すると

メチャメチャふえるからな』


花壇の奥の両サイドには

サクランボの木とブルーベリーの木を植え

所々にベンチを置きお洒落な演出もした


帰りに世界樹の芽上変異の枝を

ユルルから1本貰った

之が神眼が言ってた葡萄樹だな

そして俺の能力で複製が出来る様だ


セバスに詳しく話しを聞くと

驚いた事に世界樹の種は自殺種だった

そして花は小さな八重咲き

なるほど

だからターミネーターシードなのか

簡単に云うと要は発芽困難種だったのだ

そりゃ数が少ないわな

創造神様が創造主と云う事だな

ただ芽上変異の挿し穂は優秀で

緑魔法を土壌に送り込むと

簡単に発根するらしい

だが残念ながら世界樹とは別物らしい


礼司)「なあ〜ユルル

世界樹から離れ俺達に付いてきて

大丈夫なのか?」


ユル)「うん!

大丈夫だよ

ユルルもお父さん達と一緒に居たい」


礼司)「そうかなら

皆んなと仲良くずっと一緒に暮らそうな」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――

折角の楽しい雰囲気なのに次回礼司は

ゴブリン達から拉致被害者を救出します

だが異世界の現実的な仕来りと

貴族達特有のエゴイズムを

合わせて目撃し経験する事になります

果して礼司はどの様に判断し結論を出していくのか乞うご期待

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