第5話 ナリスと竜

この世界に前衛が敵の注意を引き付けて、攻撃を後衛の代わりに受けるという

、敵愾心の概念は無い。

敵には知恵があり、情け容赦なく自身にとって危険な、後衛を執拗に攻撃してくる。

これに対抗すべく後衛は、知覚遮断魔法で自信の気配を消し、

仕掛けておいた魔方陣をパーティーメンバーが通りすぎたら

そのパーティーメンバーに発動する、トラップ型支援魔法で、後衛自身の位置を

敵に悟られないようにしながら、常に動き回っている。

敵とパーティーメンバーの動きを熟知していないと出来ない、頭脳系の立ち位置である。

非常にやり甲斐のあると同時に挫折するもののも多い。


「行きますか」

ルウが号令を出す。

前衛の3人は幼竜に飛び出していく。

『ふく、とりあえず、最初は様子見』

「ハール、そっちに流れて」

〈ええ、こっちは大丈夫です〉

《ルウ、そっちに目を付けたみたいらしい》

「オッケ、オッケ、私ねどんとこい」

狙いを付けられたルウが気合を入れてる。

『まず、初撃はどうだろ』

幼竜の尻尾の薙ぎ払いがルウの構えた大盾にせまってる。

「んっぐ?!」

「はーい、どんどん来ちゃってー」

〈えーと、自分はちまちま攻撃しますね。大丈夫そうなんで〉

ハールが弓矢を放ち、幼竜に嫌がらせを始めた。

『いけるかな。ルウさんも余裕あるみたい』

「あー、腕痺れる。ちょっとやばいからルッツォ気を逸らして」

《分かった》

『うーん、ルウさん、連続3発は耐えれるかな』

『よし、行動開始』

『知覚遮断Lv3!、

 agility up Lv3!』

『とりあえずトラップ型回復Lv2をばらまいて、ついでに同じ所に、

 トラップ型思考分散と忘却の弱体を仕込んで』

『ルウさんとルッツォは読みやすいけど、ハールさん何するか解らないからな』

私は後衛として腕がある訳ではないので、自分の生存第一!!

思考分散と忘却で私の存在を忘れて貰えるようにトラップ型弱体魔法も

かけていく。

一通りかけ終わると、知覚遮断魔法の効果の残り時間が少なくなってきた。

『どこでかけ直そうかな』

『多分、尻尾が得意そうだから後ろでかけ直すのは危険だから、

 斜め前にしよう』

『よし!知覚遮断Lv3!』

「ナリスあぶない!」

ガインッとルウさんの大盾に守られながら、私は何とか知覚遮断魔法をかけ直した。

『弱体魔法の忘却の効きがうすい?』

『やっぱり幼竜は耐性が高いんだ』

『保険でルウさんの近くでかけ直して良かった』

知覚遮断魔法Lv3は5分程効果がもつ。

『今度は更に保険をかけておかないとやられそうかな』

《ハールもうちょっと手数増やしてくれ》

〈はいはい、わかりましたよー〉

《もう少しで幼竜が本気になりそうだ!!》

「あい!任せなさい!」

〈自分も本気出しましょうかね〉

前衛の皆がやる気になっていく。

『うーん、皆はやる気だけど、幼竜の知能が高いから、ちょっと危ないけど、

 思考分散Lv4かけとこう』

『え~と、ルウさんに負担かけたくないから、ハールさんごめんね。

 身代わりになって』

私はハールさんを盾にするように思考分散Lv4を幼竜に放った。

Lv4の魔法はどうしても、魔力が集中する影響で、幼竜に気配がバレてしまう。

『思考分散Lv4!』

〈ブッ??!フゥー!!〉

さすがハールさん。モブ感がハンパない吹っ飛びかたをして

私の身代わりになってくれた。

知覚遮断Lv3をかけ直す。

私に攻撃が来なかったってことは、思考分散Lv4が効いてるみたい。

ここからはルッツォが作戦の要なので、ハールさんはぶっちゃけ要らない。

『ごめんね、ハールさん』

この闘いの前にルッツォから、最後の追い込み方を聞いている。

『えっとー、右脚を主に斬りかかってたよね、ならここら辺かな』

『回復トラップLv3!

 agility up トラップ Lv3!と』

『次は顔に噴炎かけるんだったよね』

『だいたいここら辺に顔がきて、ルッツォは右袈裟斬りが好きだから

 この辺に、

 回復トラップLv3!

 思考収束トラップLv3!』

『で最後は背中だったよね。

 ちょっとこれは分からないから、Lv2を3個置いておこう、

 気力充実トラップLv3!×3

 回復トラップLv3!×3』

『大奮発。もう魔力余裕ないな』

『さあ、後は寝て待て、どうなりますかね』

『ルッツォがんばれ~、聞こえてないだろうけど』

どっーごーん!

『おー、爽快。まず1発目は、あ痛ー、回復トラップ外した』

『やっぱり爆発が大きいから、ルッツォ苦しそう、でも巻き込まれるから

 近づけそうにないな』

どっーごごーん。

『あ!噴炎かかった。私ももう姿バレてもいいか』

『回復Lv4!ルッツォへ!』

私は回復魔法Lv4を惜しげも無くかける。けど、、、

どっーごごごーん。

『ルッツォも幼竜もどっちも気絶しちゃった、大丈夫かな、、、

 回復Lv4!ルッツォ!

 気力充実Lv4!』

「ルッツォ大丈夫!?とりあえず医者に診せよう!ハール手伝って!』

〈はい。こっちの足持ちますね〉

『多分軽く気を失ってるだけだから、大丈夫だと思う』

『起きたら、勝ったって報告してあげよ』

「よかった!!そうね、そうしましょう」

「ちょっと、ハールしっかり持って」

とりあえず勝ち負けよりも、皆無事だったから良かったな。


『健康第一!!!』

 

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