頼まれると断りづらい湖詠君は引き受ける

闇野ゆかい

第1話押し付けられる面倒ごと

「水無瀬くーん、今から職員室に来てくれない?」

教卓の方から担任、月羽音美彩に呼ばれる。

友達との会話から抜け、月羽音先生に駆け寄り、用件を訊ねる。

「何ですか?面倒ごとじゃないですよね、美彩先生」

月羽音先生は笑顔を浮かべ、教室を出ていく。


職員室にて。


「水無瀬君にしか出来ない頼みだから断ってほしくないなぁ、先生」

可愛く甘えた声で、断りづらくしている。それに合わせ、胸もとを触ってくる。月羽音先生が相談を持ちかけてくるときはいつもこうだ。

周りの教師達の視線が集まる。

「なっなんですか、その頼みって。聞いてからやるか決めますから。話だけ」

「そういうわりには、必ず引き受けてくれるでしょ。水無瀬君は。欠席してる子がいるでしょ、その子を来れるようにしてほしいの。心配なの、先生にはお手上げなの」

「無理ですよ、他のクラスメートに......」

「ここに映画のペアチケットがあるんだけど、花谷さんともっと仲良くなれるかも......知れないけど?」

月羽音先生は映画のペアチケットを見せびらかす。

物でつりやがって、弱みを握られているのが辛い。恋愛の話には食い付きが良くて、生徒の会話に耳をすましている。

確かに花谷とは最近うまくいっていない。

「わ、わかったよ。やりますよ、やればいいんでしょ美彩先生」

映画のペアチケットを奪い取ろうとしたら、意地悪な笑みを浮かべ取られまいと遠ざける月羽音先生。

からかうのも大概にしてほしい。

「青峰莉奈ちゃんに会えたことを証明できる何かを持ってくるまで渡せないから。よろしくね、水無瀬君。また明日ね」

そう言い、欠席している青峰莉奈の住所が書かれた紙を渡し、作業をやり始める月羽音先生。

深いため息をつき、職員室を後にし教室に鞄を取りに行き、帰宅する。


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