第14話 どこからでも入れる

「あいつら、まだいたのか・・・」


「もしかして、あのゴブリン知り合いだったりする~?」


「いや、そういうわけじゃ・・・」


「よ~し、じゃあ、あの子たちにもお話を聞こ~。えいっ!」


着ぐるみ男が宙を舞う。


「ぽ~い。」


小瓶を地面に向かって投げた。瞬く間にあたりが煙に包まれる。


「ごほっ、ごほっ、何も見えん。」


煙が消え去った後には、地下へと続く巨大な穴が出来ていた。


「お~、いい感じに入り口ができたね~。」


(お、俺のダンジョンが・・・)


自らのダンジョンを破壊された男が、顔を歪める。


「どうしたんだ~い、変顔なんかして~?」


着ぐるみ男は宙に浮かびながら、のんきな声で語りかけるが、男は何も言わない。


(何も言わない。口を滑らさないようにしないと・・・沈黙は金なり。)


「まっ、いいか~。」


着ぐるみ男は指を鳴らし、一直線に地下へと落ちていった。


「は~い。最初のゴブリン送るね~。」


「ぐぎゃぁっ!」


ゴブリンが地下から飛び出してきた。


「うわっ!」


そしてそのまま地上に落下する。


「ぐぎょおっ!」


そのままピクリとも動かない。


「い、生きてるのか?お~い。」


「ほ~い。次のね~。」


ゴブリンたちが次々に宙を舞う。


「うぎゃっ!」

「うごっ!」

「うぐぁっ!」


「とりあえず、この辺にいたのは全部送ったよ~。」


(くっ、どいつもこいつも俺のダンジョンで好き勝手しやがって・・・)


男は伸びているゴブリンたちと、着ぐるみ男がいるであろう方向を睨みつけた。


「おっ、扉が見えるよ~。ちょっと行ってくるね~。」


着ぐるみ男の声が聞こえなくなる。


「あいつ、よく十キロ先までこんなに暗いのに見えるな・・・」


ダンジョンの全長は、おおよそ五キロほどである。


 ドンッ


森の方から、突然大きな音が鳴り響いた。


 ヒュー


空気を切る音が聞こえる。そして、


「うぎょおおおおおお!」


ゴブリンが空から降ってきた。そしてなぜか、地面に着く直前に減速を始める。


 トンッ


空からのゴブリンが地上に降り立った。


「ははっ、どうなってんだ。」


「ふぅ~、さすがに重かったよ~。」


着ぐるみ男が、ゴブリンの背後から現れた。


「えいっ~。」


空からのゴブリンが前方に倒れこむ。どうやら、着ぐるみ男が掴んでいたようだ。


「さて~、どんなお話が聞けるのかな~。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る