聖女と復讐者。

第18話 ブルア王との謁見。

豪華な朝食を食べた後、4年ぶりの風呂はとても心地良くてついうたた寝をしてしまう。


「体の勇者だから無事かも知れないが眠って溺れるなよ」

セレストはそんな事を言いながらジェイドの立派な物を見てしまう。

…確かにそれはセレストのものより立派だった。


「くっ…、ジェイドが異常なのだ。僕は普通だ。そう!グローバルスタンダードだ!」

「セレスト?なんか言ったか?」

湯船の淵に頭を乗せてうたた寝をするジェイドがセレストに質問をする。


「何でもない。そんな嬉しそうな顔をして入るなら昨日も入れば良いものをと思っただけだ」

そんな話の後、風呂を出るとジェイドにも新しい洋服が用意されていた。

ジェイドは服を広げるとマジマジと眺める。


「どうした?着ろよ」

「…いいのか?俺には何も返せないぞ?」

洋服を持ちながら真面目な顔でセレストにジェイドがそう言い放つ。


「バカか?」

「何?」


「リアンを助けておいて何を言う。僕たちこそジェイドに恩返し中だ」

「いや、俺こそ防人の街から助け出して貰ったし、リアンに関しては見ていられなかっただけで…」


「面倒くさい奴だ。いいから着ろよ。丸出しで歩くのか?昨日までのボロは捨てたからもう無いぞ?ウチの雑巾より汚いんだぞ?ありえん」

ジェイドは服にお辞儀までしてから袖を通す。

少し小さいサイズだったからかジェイドの筋肉質な身体が強調されてしまう。


風呂から出るとミリオンとリアンはお茶を楽しんでいた。

「お待たせ」

「あれ?ジルは?」


「ジルツァーク様は今後の予定を立てに少し席を外すと言っていましたよ」

「私の選んだ服がよく似合っていますよジェイド様!」

リアンが嬉しそうにジェイドの服を見る。


「じゃあジルツァーク様抜きで父上に会うか」

「そうだな。早くブルアに来た用事を済ませてしまおう」


4人でブルア王の元に行く。

ジェイドは流石にグリアの王子、キチンとした作法でブルア王に挨拶を交わす。

王の横の王妃が「昨晩はリアンを助けてくださってありがとう」と声をかけていた。


「救出が遅れて申し訳なかった。君が不在の間にセレストから、風呂に入っている間にリアンから多少の事情は聞いた。

自身の城とまではいかなくても、ここが少しでも心安らかになれる場所になってくれればと思う」

「ありがとうございます。ですがそれは対レドアの観点でですか?」


ジェイドの顔は先程までの顔ではなく防人の街で見せた顔に近い。

そして何故かレドアの名前を出す。


「何?」

「いえ、この数日間…剣の勇者セレストと話していて違和感がありました。

それはブルア王が故意に行った事でしたら私をこの城に迎え入れて過去の再来。対レドアを始めるのかと思いました」

ジェイドの発言にセレストが眉を顰めてミリオンが驚く。


「君は事情通のようだね」

「父、グリア王は私の幼い頃から100年目を意識して聖剣の守り手、体の勇者としての訓練と座学を施してくれました。

何故セレストは大魔法アトミック・ショックウェイブやポイズン・ウォールを知らずに居るのですか?」


ブルア王は一度目を瞑り遠くを見る。


「場所を変えよう。長い話になるだろう」

そう言ってブルア王と王妃、セレストとミリオン。そしてジェイドとリアンは別室に行くと円卓を囲む形で着席する。


「先程グリア王子…ジェイドと呼ばせてくれ。ジェイドが言った大魔法の情報はブルアでは失われているんだ」

「え?父様?」

その発言に驚いたのはセレストだった。


「…それは…何故ですか?」

「我が父、セレスト達の祖父が文献や初代…ブルアのワイト様が残した書物を秘匿してそのまま秘匿場所を公開しないままに亡くなったからだ。

幸い宝珠と剣技は正しく受け継がれているから今のままでも何とかなると私は思っていた」


「ええぇぇぇ…?」

「リアン、はしたない!」

ブルア王妃がリアンを注意する。

リアンは「だって」と言う。


「何で父様はジェイド様のグリアやミリオン様のレドアと情報開示や情報交換をなさらないのですか?」

「…」

ブルア王は何も言えずに黙ってしまう。


「多分、そこから説明が必要だな。それで着席をさせましたよね?恐らく勇者ワイトの伝説から正しい話が伝わっていない」

「そうだ。私自身それを知りたくて今この場に居る」


そうしてジェイドが話し始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る