第3話 奴隷の首輪。

「ちっ…、ではどうする?」

ジェイドがミリオンを睨む。


「…私はブルアの城に向けて進んで追いついてきた足が速いタイプの亜人だけを排除す…」

「ダメだ。それでは次に攻め込まれるのはレドアだ」


「え!?」

「たった3人でこの街から脱出できた事が奴らにバレてみろ。

間違いなくこの街の戦力は増強されるし、仕返しの名目で奴らは更に穴から出てきて攻め込んでくる。だがそれは強力な戦力である勇者の集まるブルアではない。無防備なレドアやその周りの街や村だ」


「そんな…お父様…」

ミリオンが青い顔を手で覆って震える。


「それならどうするんだ?」

「皆殺しに決まっているだろ?ミリオン、アトミック・ショックウェイブは使えるな」


「え!?何故それを!?」

「アトミック?」

突然聞かれたミリオンは予想だにしていない魔法に驚き、何も知らないセレストがキョトンとミリオンを見る。


「グリア王…父はいつの日か勇者達で亜人達とその王、そしてモビトゥーイを倒す時に3人の力を合わせる必要があると言っていた。

その為の訓練や修行、座学を俺は怠った事がなかった。

だからこそグリアが攻め込まれたのだと思う」


「そんな…、だがあれは突然の事で!グリアが狙われたのだって偶然…」

「そうか?大方金を積まれて国を売った馬鹿がいたんだろう。いいか?人間も敵だと思え」


「でも…この街は穴に近いだけで人も多く住んでいて」

「戦いもせずに街を占領されてな」


「でも心からは服従をせずに私達勇者が亜人を倒すのを待っていたはずよ!」

ミリオンが必死にジェイドに反論をする。


「ちっ、いちいちうるせぇな。お花畑満開の綺麗事で家族や民が守れるわけないだろ?」

ジェイドはそう言ってミリオンの前まで行く。


カチッ


そしてセレストの前にも行く。


カチッ



2人は突然の事で状況が理解できない。

だが今の音は自身の首から発せられた物で、それをしたのがジェイドだとは理解した。



「お前達、主人は俺だ」

そう言うと首からカチッとまた音がした。


「今お前達に着けたのは「奴隷の首輪」だ。俺に従って貰う。「奴隷の首輪」に逆らうと死を伴う程の激痛が身体を襲う。

俺が獄長に歯向かっても無事なのは俺が体の勇者で死ねないからだ」


突然そう言われて慌てる2人は首輪に手をかけて外そうとするが激痛が襲う。


「きゃぁぁぁぁっ」

「わぁぁぁぁっ」

悲鳴を上げて床にへたり込む2人。


「身をもって経験か?偉いな。よし、ミリオン…質問に答えろ。拒否と虚偽は痛いぞ。

アトミック・ショックウェイブは使えるな?」


「……はい」

暫く躊躇したがあの痛みを知った後では無駄な事で痛みを負いたくない気持ちになる。


「よし、作戦を説明する」

ジェイドがそう言ったが2人の顔には不満と疑念が見て取れる。


「…おいおい、睨むなよ。鍵は亜人共を倒したら外してやるよ。それに基本的に俺は仲間のお前達には何もしない。ただ指揮権は俺にあって命令違反をしたらズドンだ。

それ以外は同じ勇者なんだ。仲良くしようぜ?」


そう言われても「はいわかりました」と言える物ではない。

2人は黙ったままジェイドを見る。


「…ふぅ…まあいい。じきに慣れるだろ。

セレスト、お前は退路の確保。街の南東、ブルアの方角の敵を蹴散らしておけ。返事だ」


「わかった」

セレストはジェイドの考えには賛成しかねるが命令違反以外は何をしても問題ないと言う部分を理解していた。

そして早くこの街の亜人を一掃して「奴隷の首輪」を外させたい一心だ。


「よし、ミリオン。お前はとりあえずここで待機だ。

俺は街の入り口方角から沸いてくる援軍の亜人共を潰せるだけ潰す。

そうすれば亜人共は俺に群がる。

セレストの露払いが落ち着いたら2人は合流をして街から離れろ。

そして安全圏まで離れたら街にアトミック・ショックウェイブを放て。

合図なんて不要だ。どうせ俺は死なないんだ。俺ごと奴らを消し去れ。

その後は安全な場所で周囲を警戒しながら俺を待て。

わかったか?」


「…ええ」

ミリオンも言う事を聞く事にした。

この1回、ジェイドの無茶振りに応えて首輪を外させればその後の事は平和的に話し合いで何とかなると思っていた。


「ジル、お前はセレストと一緒にいろ」

「わかったよ!」

ジルツァークはふわふわとセレストの横に移動する。


「よし、始めるぞ。セレスト行け!」

その声でセレストとジルツァークは走っていく。

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