第21話 質問サイトを頼りたい②
「くそくそっ! パソコンオタクって、なんでどいつもこいつも陰険なクズばっかりなのよ!」
「普段のわたしが、いかに優しく教えて差し上げているか、気づいていただけたでしょう」
「あんたがDVDの使い方知ってれば、最初からこんなことにはならなかったのよ……あーもう! こいつ殺したい! でも、教えてもらわなきゃDVD見れないし……」
「どっちにしろ答えが聞けるとは思えませんがね。この『もろきゅう』とかいうやつ、あきらかにドヤ顔説教がしたいだけで、まっとうに回答する気なんてさらさらないですから」
「じゃあどうすれば……」
その時、開きっぱなしのドアから、さつきが顔を出した
「紅子様。失礼します」
「なによ」
「修理に出していたDVDデッキが戻って来ましたよ」
「ほんと!?」
屈辱に打ちひしがれていた紅子の顔が、一気に明るくなった。
「ふっ……アハハハハ! なーんだ! それならもう、こんな説教ゴミジジイに頭下げる必要ないじゃない!」
形勢逆転、とばかりに紅子は笑う。
「かわりに溜まった鬱憤をぶちまけてやるわ! それ、反撃よ!」
ベニコ:
『もうお前の助けなんていらねーよ!!! バーカ! バーカ! 死んでろカスがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
お得意の草四十一連発を書き込んで、紅子は満足そうに頷いた。
「よしよし、これでスッキリしたわ。このレスバトル、わたしの勝ちね」
「あんまり汚い言葉を使うと、ここでもアカBANくらいますよ」
イルカが忠告したが、紅子は涼しい顔だった。
「いいわよ別に。こんなボランティアの仮面かぶった偽善者の巣窟なんて、二度と利用しないから。さー、リビングでDVD見よっと」
だが、紅子がDVDを持ってリビングルームへ向かうと、テレビの前には先客が座り込んでいた。
「ちょっと
炎城寺家の家令、
「おや紅子様。申し訳ありませんが、故障して動かないのですよ。これからメーカーのサポートに連絡します」
「聞いてるわよ。でもDVDデッキは修理に出して戻って来たんじゃないの」
「そっちは治ったのですが、今度はテレビが故障したのです」
「はあ!?」
デッキが治ったと思ったら今度はテレビとは、どういうことだ。それでは結局、DVDは見られない。
紅子は憤懣やるかたなく自室へ戻った。
「くっそー! デッキも、テレビも、キーボードも、どいつもこいつも軟弱すぎるわよ! これだから機械は嫌いなのよ! 高機能だのスタイリッシュだの宣伝しても、すぐ壊れたら意味ないでしょうが!」
「それで、どうなさるんですか、お嬢様?」
イルカが聞いた。
「……もういちど知恵フクロウでDVDの使い方を聞くしかないわね」
つい一分前に、もう二度と利用しない、などと捨て台詞を吐いたサイトに舞い戻り、紅子は再び質問を投稿した。
ベニコ:
『パソコンでDVDを再生する方法を教えてください。DVDはブルーレイじゃなくて、リージョン2で、パソコンはWindows10です。お金がかからない方法でお願いします』
もろきゅう:
『あなたはさっき私に暴言を吐いた人ですね。それと、ここでは同じ質問板を複数立てるマルチポストは禁止されています。合わせて運営に通報します』
「げ! さっきのゴミがまた粘着してきたわ! てゆーか、ろくに相談に答えもせずにパワハラかましてくる、こいつの方こそ通報されるべきでしょ!」
しかし、ここでまたレスバトルを開始してもDVDを見ることは出来ない。
紅子は怒りと屈辱を押し殺して、頭を下げる。
ベニコ:
『すみませんでした、本当にごめんなさい。反省してます。ですから、どうか再生する方法を教えてもらえないでしょうか』
だが、その直後にイルカがスマホを見て言った。
「再生方法、調べたら分かりましたよ。『パワーフルDVD』っていうフリーソフトを入れれば見れるみたいです」
「マジ!? でかしたイルカ!」
再び紅子が手のひらを返す。
ベニコ:
『やっぱお前いらねーよドヤ顔説教デブ! お前なんかに聞かなくてもわかったもんね! やーいやーい! わたしの勝ちー!』
「あ、やっぱ駄目です。リンク先のページが無くなってます。このソフトはもう手に入らないみたいですね」
ベニコ:
『まことに申し訳ありません。やはり再生方法を教えていただけないでしょうか。先程のコメントは友人が悪ふざけで書き込んだものです』
「ああ、他にもフリーソフトありますね。『BLCメディアプレイヤー』ってのは、今でもちゃんとダウンロード出来ますから、これ使えば見れますよ」
ベニコ:
『しねしね死ねパワハラ野郎! お前なんか誰も必要としてねーよゴミ!」
再三にわたる手のひら返しと暴言を連発する紅子。
とはいえ、最終的にはイルカの落としたフリーソフトのおかげで、「超熱戦! 炎城寺紅子の伝説激戦メモリアル2 初回限定特別版」は無事に再生されたのだった。
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