聖戦の楽園
天羽睦月
第1章 崩壊する世界
第1話 壊れ始める日常
朝日が眩しい休日の朝、ベットから体を起こして少年は背伸びをしていた。少年の名前は黒羽出雲、高等学校に通う1年生である。本日は好きな歌手グループのライブが行われる日であるため、出雲は起きる時間よりも早く目が覚めていた。
出雲は黒髪をしており耳にかかるまでの長さをし、無造作な髪型を意識しながらも爽やかなイメージを与えるようにしていた。また、二重な目元が印象的で目鼻立ちがハッキリしていると言われている。出雲は朝食後に身支度を整えると、カジュアルなラフな服を着て硬さげ鞄を持って。リビングに行くと、そこではテレビを見て寛いでいた母親と妹に出かけてくると言った。
「気を付けて行くのよ? 何かあったらすぐに逃げなさいね」
「最近物騒だから気を付けてね? お兄ちゃんはすぐに首を突っ込むから、また巻き込まれちゃうよ?」
母親は肩を超す長さがある黒髪の長髪をし、やせ型で優しさを感じる見た目をしている。また、妹は出雲より2歳年下の中学生である。妹は茶髪の髪色で肩にかかる長さをし、二重の目元が印象的な可愛い活発な少女である。ちなみに、母親は黒羽楓。妹は黒羽琴音という名前である。
「分かってるよ、気を付けまーす。じゃ、行ってくるね!」
出雲は二人に行ってくると言い、ライブ会場に向けて外出をした。ライブ会場へは家から電車を乗り継いで40分程度なので、開場時間の2時間前に到着をしてしまう程に早く家を出ていたようである。
「予定より早く到着しちゃった……だけど、グッズの物販とかあるし時間が潰せる! あっ! 欲しいグッズがもう無くなりつつある! 早いよ!」
出雲はグッズを手に入れるために物販の列に並ぼうと、小走りで列に並ぼうとした瞬間に突然激しい揺れが襲ってきた。
「な、なんだ!? 急に揺れが!? 地震なの!?」
突然発生した揺れに驚きつつも、立っていられないほどの揺れが発生したために地面に手をついて揺れが収まるのを待った。ライブ会場の係員たちは、会場に来ている人たちに向けて揺れに気を付けてくださいとアナウンスをしていた。
「な、何なのこの揺れぇ……嫌だぁ!」
「落ち着け! 地面に手をついて!」
出雲の周囲にいた人たちは、悲鳴を上げて地震の揺れに恐怖を感じているようであった。出雲は地面に手をついて揺れが収まるのを待ち続けること10分強、次第に揺れが収まってきていた。
「一体何だったんだ……地震は突然来るけど、変な揺れだったな……上下左右に揺れる不思議な感じで、緩急もあって体感したことない揺れだった……」
そう一人で呟いていると、出雲のいる頭上の空からガラスを割るような音が聞こえた。出雲が空を見上げると、ライブ会場の空中がガラスを割ったようにヒビが入っており、そこから人型と思える集団が地面に落下してきた。その集団は黒い甲冑を着ている未知な生物や簡易的な装備をし、顔全体を覆っている装飾が施されている仮面を被っている未知な生物が多数いた。
「な、なんだあれは!? すぐに逃げろ!」
「襲ってくるぞ!」
誰かが逃げろと言った瞬間、ライブ会場にいた全員が一心不乱に逃げ始めた。誰かは人を押し退けて我先にと逃げ出し、誰かは倒れた人など気に留めずに踏みつけながら逃げて行った。出雲は息を荒くしながら、髪を振り乱して一心不乱にライブ会場から逃げていた。
突然空の空間が割れたことにより、そこから現れた未知な生物によって阿鼻驚嘆の渦となっているライブ会場から離れた位置にある交差点に出雲は必死に逃ることが出来た。そこは開けた場所となっているので、多くの人々が交差点に集まっている様子である。
「突然降ってきたあれはなんだ!? 空間が割れて降ってきて、人を襲いだした!? 母さんたちは無事なのか!?」
出雲は交差点に避難をすると、肩さげ鞄からスマートフォンを取り出して母親に通話をかけた。しかし、何度通話をかけても出雲からの通話に出ることはなかった。
「どうしてでないんだ! 家に電話しても出ないし! まさか……あの怪物に!?」
慌てている出雲だが、一度落ち着こうと息を整えた。交差点にはライブ会場にいた人々や、周囲のビルにいた人やこの地域に住んでいる人々も集まっているようである。また、出雲以外の人々はスマートフォンでSNSを見て情報を集めている様子であった。
「ここまでくれば……なんだこれ……突然地震が起きたら空から変な怪物が……」
「見て! 世界中であの変な怪物が出現してるみたい! 軍や警察が応戦してるけど、武器があまり通じないみたい!」
「なんだそりゃ!? それじゃ日本でも応戦できるか分からないじゃないか!」
スマートフォンでSNSを見て、交差点に避難をしている人々が愕然としていた。日本以外の国々にも出現をしていることで、どうすればいいのか分からなかったからである。
「ビルの外壁が崩れるぞ! そこから逃げろ!」
「え?」
出雲たちがいる交差点に後方にある高層ビルの外壁が落下してきた。出雲は間一髪ライブ会場側に逃げることで難を逃れることが出来たが、複数の人々が落下したビルの外壁に押し潰されたようで、押し潰された人の友人たちが悲鳴を上げていた。
「いやー! どうして私を庇って!」
「おい! 大丈夫かー! 死ぬな!」
落下した瓦礫に駆け寄って助け出そうとするも、重くて持ち上がらないようである。いたるところで警察車両や救急車のサイレンが鳴っており、日常ではない異常な風景に出雲は戸惑っている。
出雲が周囲を見渡していると、ライブ会場から人型の未知な生物が複数体現れた。出雲はその未知な生物を見ると、後ずさりをしてビルの外壁が落ちている交差点に引き返すと、既に未知な生物が刀や剣を手にして周囲にいる避難者を攻撃していた。
「く、来るなー! あっちにいけー!」
「いやー!」
阿鼻驚嘆の渦となっている交差点に、体を切り裂かれて吹き出した鮮血が飛び散っていた。出雲の顔に鮮血がかかると、その場にへたり込んでしまう。
「め、目の前で人が斬られた……」
出雲は眼前に迫る未知な生物を見ていると、勢いよく交差点に来た黒塗りのトラックが未知な生物を吹き飛ばしていた。そして、黒塗りのトラックの後ろにあるリヤドアから薄いピンク色の長髪の少女が飛び出した。その少女は出雲より少し低めの165センチ程度の身長をし、黒を基調としたブレザー型の制服を着ていた。
「き、君は……ここにいたら危険だぞ! 早く逃げて!」
立ち上がって目の前に現れた少女に話しかけると、その少女はあなたこそ逃げなさいと前を向きながら落ち着いた口調で言う。
「急に現れた君を一人で残すわけには……」
少女の前に立って、顔を見ながら出雲は言った。出雲は少女の顔を見ると、顔を紅くしてしまった。少女は薄いピンク色の肩を多少超す程度の長さをしており、目鼻立ちがハッキリしている可愛い系の少女であった。
年齢は出雲と似ているように見え、着ている制服の上からでも分かるスタイルの良さも顔と同様に目立っていた。
「一緒に逃げよう! 危ないよ!」
「私はあの怪物を倒すために来たのよ! この刀が見えない?」
そう言って少女は右手に持つ刀を出雲に見せた。すると、黒塗りのトラックを運転していた黒服の男性が、出雲に邪魔をするなと叫んだ。
「君! その子の邪魔をするんじゃない! 早くここから逃げなさい!」
「えっ!?」
「聞いたでしょ? 早く逃げて」
少女はそう出雲に言いながら、迫って来る未知な生物と出雲が呼んでいた怪物を横に両断した。その姿を見た出雲は、凄いと小さな声で呟いた。
「もういい! このトラックに乗りなさい! 一緒にこの場から逃げるぞ!」
「は、はい!」
出雲は少女が出て来た黒塗りのトラックの後方にあるリヤドアから乗り込むと、扉が開いたまま動き出した。出雲は黒塗りのトラックの壁に寄りかかりながら揺れに耐えている。
「あの女の子は無事だろうか……」
そう呟いた瞬間、黒塗りのトラックが激しく揺れて横転してしまう。出雲は壁に強く頭部を衝突させてしまうも、気を失うことはなかった。
「な、何が起きたんだ……」
リヤドアから出て前方の運転席を見に行くと、運転手の男性が口から血を吐いていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「き……君は……無事なようでよかった……早く逃げなさい……」
息も絶えそうになっている運転席の男性は、運転席の窓ガラスを突き破って鉄パイプが体を貫通していた。出雲はその姿を見ると、目を見開いてすぐに助けますと慌てた様子で言う。だが運転手の男性は、美桜を頼むと小さく呟くと事切れたようであった。出雲は顔を歪めて悲しい顔をしながら、運転手の男性の目を閉じた。
「分かりました……俺が彼女を……」
運転手の男性が美桜と言った女性は、先ほどの少女だと出雲は核心をしていた。黒塗りのトラックのから少し離れると、この場所がライブ会場からそれほど離れていない、副都心の繁華街であると見て取れた。
「こんな場所でもビルの外壁や、小さな建物が崩れてる……怪物も遠くに数体まだいる……この繁華街にも死んでいる人や瓦礫に押し潰されている人が沢山だ……」
出雲がいる副都心の繫華街は、駅から遠くない位置にある日本で一番の歓楽街が側にある。そこでは地面に倒れて血を流している人や瓦礫をどかして意識がある人を助けている人が多数いた。出雲は黒塗りのトラックから離れると、怪物と戦いながら出雲の位置に移動をしている薄いピンク色の少女が見えた。
「おーい! ここだー!」
出雲が少女に向かって叫ぶと、出雲の方向を見た少女は何でそこにいるのよと叫んでいた。
「トラックが横転して、運転手の人がやられたんだ! その人から君を頼むって言われた! だから!」
「あなたは何もできないでしょ! 早く逃げなさい!」
美桜と運転手の男性に呼ばれていた少女は、出雲に再度逃げてと言いながら、出雲の側にまで来ていた。
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