28 幕間 闇の中

 幕間 


 闇の中


 草子は真っ暗な闇の中で目を覚ました。

 それから草子は自分がどうしてこんなところにひとりぼっちでいるのかを思い出してみる。

 ……そうだ。

 私は夕子ちゃんを探して、この森の中にやってきたんだっけ。

 そんなことを思い出して草子は笑う。


「よいしょっと」

 そう言って草子は重い身体を持ち上げる。(体は本当に重かった。まるで重力が何倍にもなっているみたいだった)

 きょろきょろと周囲の風景を見渡してみる。

 でも、なにもない。

 ここにはただの深い闇が存在しているだけだった。


 ……夕子ちゃん。

 どこにいるの?


 草子は当てもなく闇の中を歩き出した。


 自分の手を見ると、その手の指の先は、もう『人間ではなくなっていた』。

 そこにあったのは『黒い鱗で覆われている化け物の指』だった。


 ……黒い蛇の指。


 その指を見て草子は思う。


 私はもうすぐ黒い蛇になってしまう。

 一匹のなんの感情も、言葉も持たない、一匹の蛇になってしまう。


 人間ではなくなってしまう。

 だから、その前に夕子ちゃんに会わなくてはいけないんだ。


 自分の大切な目的を思い出して、草子は強く歩みを進める。


 草子の進む真っ暗な闇の中に光はない。

 それでも草子は進む。


 ただ、前に。

 ……前に向かって。

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