28 幕間 闇の中
幕間
闇の中
草子は真っ暗な闇の中で目を覚ました。
それから草子は自分がどうしてこんなところにひとりぼっちでいるのかを思い出してみる。
……そうだ。
私は夕子ちゃんを探して、この森の中にやってきたんだっけ。
そんなことを思い出して草子は笑う。
「よいしょっと」
そう言って草子は重い身体を持ち上げる。(体は本当に重かった。まるで重力が何倍にもなっているみたいだった)
きょろきょろと周囲の風景を見渡してみる。
でも、なにもない。
ここにはただの深い闇が存在しているだけだった。
……夕子ちゃん。
どこにいるの?
草子は当てもなく闇の中を歩き出した。
自分の手を見ると、その手の指の先は、もう『人間ではなくなっていた』。
そこにあったのは『黒い鱗で覆われている化け物の指』だった。
……黒い蛇の指。
その指を見て草子は思う。
私はもうすぐ黒い蛇になってしまう。
一匹のなんの感情も、言葉も持たない、一匹の蛇になってしまう。
人間ではなくなってしまう。
だから、その前に夕子ちゃんに会わなくてはいけないんだ。
自分の大切な目的を思い出して、草子は強く歩みを進める。
草子の進む真っ暗な闇の中に光はない。
それでも草子は進む。
ただ、前に。
……前に向かって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます