20 第三章 はじめまして。朝露草子です。よろしくお願いします。

 第三章


 はじめまして。朝露草子です。よろしくお願いします。


 みんなの前で恥ずかしそうにしながら、ぎこちない挨拶をする君のことを、私は今もちゃんと覚えているよ。


「そうかな? そうは見えなかったけどな。さっきの君は本当に『深刻な顔』をしていたよ? 『すっごく不安そうで、思いつめた顔』をしていた。まるで『生きているって感じがしなかった』。私、最初に君を森の中で見つけたとき、『あの子は幽霊かもしれない』、……うわ、私、もしかして幽霊を見ちゃった? ……って思ってすごく驚いたくらいだったんだからね」

 と女の子は言った。

 女の子にそう言われて、草子は驚いた表情をする。

 ……幽霊かもしれない? 誰かにそう思われるくらい、私はそんなひどい顔をしていたのか? ……自分では全然気がつかなかった。

 草子はそう思ってから、「じゃあ、あなたは結構前から私のことをこの森の中から見ていたの?」と女の子に聞いた。すると女の子は「そうだよ。ずっと見てた。君のこと。森の中から」と全然悪気もない表情で、今度は呆れた顔をしている草子にそう言った。

「どう? 少しは元気になった?」にっこりと笑って女の子は言った。

 よく考えてみると、草子はその女の子の顔だけではなくて、その女の子の声にも、聞き覚えがあった。女の子の声は、草子が以前にどこかで聞いた覚えのある声だった。

「うん。……まあ、少しは」と草子は言った。その言葉は嘘ではなかった。草子は女の子と出会ってから、確かに結構、元気になっていた。(まあ、だからと言って人をいきなり、驚かしていいというわけではないのだけど……)

「ならよかった」と、本当によかった、というような顔をして、女の子は草子に言った。

 ……そのあと、二人はそのまましばらくの間、お互いに相手の顔を見つめ合うようにして、なんとなく黙ったまま、じっとしていた。

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