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その大きな瞳に見つめられていると、なんだか、自分の心がすべてその女の子に読まれてしまうのではないか? 伝わってしまうのではないか? と思えるような透明で綺麗な、……そんな純粋な瞳を女の子はしていた。女の子の大きな黒目の中に写り込んでいる自分の顔を見ながら、草子はそんなことを考えていた。
「どうしたの? じっと見つめちゃって。私に一目惚れでもしたの?」
少し首をかしげて女の子は冗談ぽい口調でそう言った。
女の子が首を動かすとその長い髪の毛がかすかに叶の目の前で揺れ動いた。
その女の子の長い髪の毛からは、とてもいい匂いがした。凛と咲く白い花のような匂い。あるいは、雨上がりの少し湿気を残した、森の匂い。……残り香のような、雨の匂い。そんな匂いがその女の子の長い黒髪からは漂っていた。
確かにその女の子は美しかった。草子と同い年くらいのこの年頃の小学生の男の子なら、ほとんどの男の子がその女の子を見て一目惚れをしてしまうような姿をその女の子はしていた。
(草子は女の子だけど、好きになるかもしれないと思った)
でも、草子がその女の子の顔から目をそらすことができなくなったのには、別の理由があった。
「違うよ。そうじゃないよ。でも、……ただ」
「ただ?」
もう一度、今度は逆の方向に首をかしげて(まるでゆっくりと動くメトロノームのようだった)女の子は言う。
「……私たち、以前にどこかであったことないかな?」とその女の子の顔をじっと見つめながら、草子は言った。
記憶喪失のはずの草子は、なぜか、その女の子の顔に見覚えがあった。その女の子のことを以前どこかで見たことがあるような気がしたのだ。
草子はじっと女の子の顔を見つめた。
すると、その女の子はそんな草子の言葉を聞いて、「……ねえ、それってもしかして君は私のことを本気で口説こうとしているの? なんだ、やっぱり私に一目惚れじゃん。……君、素直じゃないね」
と、一度ため息をついたあとに、その綺麗な女の子は草子に言った。
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