8 駅

 駅


 ……さようなら。元気でね。


 草子が夕子と出会い友達になったのは、小学生のときだった。


 季節は冬。


 場所は、二人以外に誰も人がいない無人の駅。


 草子はさっきからずっと時計ばかりに目を向けている。

 ちくたくと止まることなくときを刻み続けている時計。

 時間が止まればいいのにな。と草子はそんな子供っぽいことを今、本当に心から思っていた。

「どうかしたの?」と草子を見て夕子が言う。

「別になんでもないよ」と夕子を見て草子は言う。

 二人は目と目を合わせて、見つめ合う。

 その間も、時計の針は止まることなく時間を刻み続けている。……二人の、さようならの時間が迫っているのだ。

 ……出会いがあれば、別れがある。

 それは当然の出来事なのだ。それくらいのことはもう草子にだって痛いくらいによくわかっている。

 でも、それでもやっぱりお別れはとても寂しいものだった。

「約束しようか?」と夕子は言った。

「約束?」とまた時計を見てから草子は言う。

 駅の外では雪が降り始めている。

 気温はとても低くて寒い。

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