5
蛇はじっと草子のことを見つめていた。
草子はその不思議な黒い蛇を目で見ながら、耳ではざーという洞窟の外に降っている雨の音を聞いていた。
「この洞窟はあなたのお家なの?」と草子は言った。
黒い蛇はじっと(時折真っ赤な舌を出しながら)草子のことを見続けている。
「もしそうだったとしたらごめんなさい。でも少しの間だけ、雨が止むまでの間、ここで雨宿りをさせてもらってもいいかな?」とにっこりと笑って草子は言った。
黒い蛇は草子のことを見続けている。
真っ赤な目。
そんな目をしている蛇がこの世界にいるなんて、草子は今日、初めて知った。
やがて黒い蛇は目を閉じると、その場所にとぐろを巻いて眠りについた。そんな蛇の行動を見て『この場所に私がいることを蛇が許してくれた』と解釈をした草子は「ありがとう」と蛇に言った。
それから草子は目を閉じた。
眠ってはいけないと思いながらも、心地よいざーっという雨の音を真っ暗な闇の中で聞いていると、自然と草子の意識は遠のいていき、草子はゆっくりとその場所で眠りについた。
その夢の中で草子は自分がずっと探している女の子、木花夕子の夢を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます