蛇はじっと草子のことを見つめていた。

 草子はその不思議な黒い蛇を目で見ながら、耳ではざーという洞窟の外に降っている雨の音を聞いていた。

「この洞窟はあなたのお家なの?」と草子は言った。

 黒い蛇はじっと(時折真っ赤な舌を出しながら)草子のことを見続けている。

「もしそうだったとしたらごめんなさい。でも少しの間だけ、雨が止むまでの間、ここで雨宿りをさせてもらってもいいかな?」とにっこりと笑って草子は言った。

 黒い蛇は草子のことを見続けている。

 真っ赤な目。

 そんな目をしている蛇がこの世界にいるなんて、草子は今日、初めて知った。

 やがて黒い蛇は目を閉じると、その場所にとぐろを巻いて眠りについた。そんな蛇の行動を見て『この場所に私がいることを蛇が許してくれた』と解釈をした草子は「ありがとう」と蛇に言った。

 それから草子は目を閉じた。

 眠ってはいけないと思いながらも、心地よいざーっという雨の音を真っ暗な闇の中で聞いていると、自然と草子の意識は遠のいていき、草子はゆっくりとその場所で眠りについた。

 その夢の中で草子は自分がずっと探している女の子、木花夕子の夢を見た。

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