掌編小説・『おまわりさん』

夢美瑠瑠

掌編小説・『おまわりさん』

       掌編小説・『おまわりさん』


 私は桐津・淳朱(きりつ・じゅんしゅ)と言って、婦警なんですけど、日本一犯罪が多いS-区の交番に配属されたんです。

 22世紀の今では東京とかはもうスラム化していて、治安が悪いことおびただしいんですけど、交番には他に五人ベテランで屈強な警官とか若くて格闘家みたいな警官とか、配備されているので、何とか大丈夫だと思います。

「浜の真砂は尽きぬとも世に犯罪の種は尽きまじ」とか言ったっけ?

 東京では事故だの迷子だの痴漢だの窃盗やら自殺やら老人の徘徊やらオレオレ詐欺やらたくさんひっきりなしに事件があって、警官は目が回るほど忙しいんです・・・

 婦警という職業については、親や友達は「危ない仕事」と言って、心配していて、早く辞めて結婚でもしたら?と言うんだけど、私は犯罪を撲滅するという、正義の味方っぽいこういう役割が気に入っていて、婦警になるために学生時代からいろんな法律を勉強したり少林寺拳法とかレスリングとかやっていたので、すぐにはやめたくないんです。

 

・・・ ・・・


 凶悪犯の通り魔とか、異常者の強盗とかを、スタンガンとかを使って、初日の朝からもう三件処理した後で、オレオレ詐欺の相談がありました。

「さっき、オレだけど交通事故を起こしてすぐに200万円いるんだけどこれこれの口座に振り込んでくれないか?という電話があって、詐欺だと思うんだけど、確信がないのでー」と、おばあさんぽい声で電話相談されたので、駆けつけました。一通り捜査アイテムで調査して、「・・・電話番号は公衆電話ですね。口座の名義は『鷺 錠修』・・・サギ・ジョウシュウ・・・これはジョークかしらね?

 で、調べたところしょっちゅう、100万円単位の出入金の記録があります。

 これは完全に振り込め詐欺ですね。

 名義人を追及すれば摘発はたぶん可能ですよ。

 安心してね。おばあさんの対応もよかったです」

 おばあさんは最初安堵した様子だったけど、「ありがとう。でもね、息子は本当に「鷺 錠修」という名前なんですけど・・・」困惑した顔で言います。

「ええっ?どういうこと?息子さんの職業は何なんですか?」

「デイトレードとかいうのをやってて、しょっちゅうお金を出し入れしているみたいですけど・・・」

「そうなんですか・・・???じゃあ本当にお金が必要だったのかしら?」

「息子に電話してみます」

「そうですね」

 私はキツネにつままれたような気分でした。

「RRRRR・・・もしもし?錠修?お前さっきの電話は?」

「ハハハハハ!ひっかかっただろ。エイプリルフールだよ。」

「でも声が違うよ」

「風邪ひいてるんだよ・・・ガチャリ」

 ガクッと私たちはずっこけました。

 息子さんは冗談好きのひょうきんものなのだそうです。


・・・ ・・・


 たまにはこういうこともありますが、交番のおまわりさんというのは市民生活の平和と安全を守る重要な役職で、やりがいがあるので、私は出来得る限り続けていきたいと思うのです。


<終>

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