百合の花 ー6ー
A(依已)
第1話
家に着くと、わたしは早速百合を飾るべく、部屋の棚の上を片した。
誰かからもらった海外旅行のお土産の、綺麗な刺繍が施されたランチョンマットを、棚の上にひいた。
真ん中に百合の花を据え置き、両脇には、銀の燭台に大ぶりの白い蝋燭を飾った。
わたしだけの、神聖なプチ祭壇が完成した。
わたしは鏡台の引き出しにしまわれたままで、一度も使ったことなどないのに、すでに埃っぽくなっている、小さなクロスのチャームがついたネックレスを、首からおもむろにぶら下げた。
そしてその夜、部屋の明かりを消し、蝋燭をそっと灯した。ゆらゆらと揺らめく黄金色の炎によって、神聖がいっそう増したそのいつもよりうんと薄暗いわたしの部屋で、わたしは再び手を合わせ、祈りを捧げた。時間が経過するのも忘れて―――。
百合の花 ー6ー A(依已) @yuka-aei
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