オレとボク

「ドラゴンくん。ごめんね、そろそろ行かないと。またね。」

──ドラゴンクン、ゴメンネ、ソロソロ、マタネ

このオトはオレから離れるときのオトだ。


『グゥ……キュルルルル……』


"ボク"は手を振って、オレの家から出て行った。


"ボク"は離れるとなかなか戻ってこない。

次に遊べるのはいつになるのか。

オレはカラダを丸めて"ボク"が出て行った方をずっと見ていた。


***


"ボク"が出て行ってチョットしてから、上の穴からナニかが落ちてきた。

よくわからないが、いつからか、たまにゴハンが落ちてくるようになった穴だ。

今日はどんなゴハンだろう。落ちてきたモノを見てみた。


"ボク"みたいなのだった。

……いや、それは"ボク"だった。目と目の間から赤いミズが出ている。


『キュルルルル……グゥ……』

オトを出してみるが動かない。

鼻先でつついてみても、なんの反応もない。


"ボク"のカラダがどんどん冷たくなっていく。

オレのカラダを丸めて、あたためてみるが変わらない。

"ボク"はただの肉となっているようだった。


『グゥ……』


友好的なのが肉になったとき、"ボク"みたいなのがどうするのかわからない。

だが、オレらみたいなのはゴハンにする。

オレの血肉にする。"ボク"はオレになる。


オレは"ボク"を口の中に入れた。


***


巣から出て、翼を広げる。


『グォォォン!!ガァァァァアアアア!!』


これで、オレと"ボク"はずっと一緒だ。

だが、撫でてくれる"ボク"はもういない──


翼を大きく動かして、カラダを浮かせる。

このよくわからないキモチを晴らすために、

カラダをソラに向かって放つことにした。


オレは"ドラゴンクン"──

"ボク"がつけてくれたナマエだ。

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