EP1 JUGGER
第1話:夢の大地
東京上下田
政府の命令により東京湾は世界最大級の埋め立て地となった。
当時は「未来を変える。」などともてはやされ、「夢の大地」とも呼ばれていた。
上下田が完成してから、約一世紀。
上下田の細部まで治安維持は行き届かず、麻薬の売買から殺人、強盗etc…
「夢の大地」などと呼ばれていた頃が懐かしい。今はもう「夢の大地」などではなく、名付けるならそうだ…といっても、何も思いつかないな。
2220/4/27
「はぁ……。」
「どうしたんですか、ため息なんてまた珍しい。」
そう言うと
「あ、あぁありがとう。」
「で、なんでため息ついてたんですか?」
「例のTRANPよ、犯罪組織の。」
「あぁ…前に聞いた……で、進捗があったんですか?」
「そ、で今から行かないといけないのよ。」
「なるほど、それでここに。」
ここは
「お国もねぇ。FCEだかなんだか知らないけど、そんなわけ分からない組織の言うことなんか聞かなくていいのに。」
「この国はすがるものを欲しているんですよ。」
「そうかしら?」
「で、今から中へ?」
「現場へ急行よ。でも、あの人たちのほうが先につくでしょうね。」
「あの人たち?」
「
「?」
「仮称チェイサーよ。」
第一話 夢の大地
チェイサー作戦本部
「
「あ?わかってんよ、んなこたぁ。」
高橋はダルそうに答えた。
奥から眼鏡をかけた女性が寄って来た。
「早く目を通してくれませんかぁ、仕事が進まないんですよ。」
「そうだよなぁ
「そうは言ってもなぁ。ホラ、あの人はちゃんとやってんじゃねぇか。」
高橋はデスクに座るタバコをくわえた女性を指さした。
「仕事なんで。」
「
「
「はい?」
「仕事にゆとりを持たす必要は?」
「へっ?」
「そこに意義が無いなら、私はやらないわ。」
「ゆとりに、意義ねぇ。」
「高橋さん、
「あぁ、それはな。」
ここで高橋は初めて立ち上がった。
「三人に行かせてある。」
空は雲一つない晴天。太陽に対して真っ直ぐと大きな塔が突き刺している。だが、そんなことにひるむこともなく太陽は照り続ける。
「うーん…やっぱジオットはでかいな。」
佐々木は大きな塔を見上げながら呟いた。
「この上下田の創造と崩壊の象徴…でしたっけ。」
「おっ、良く知ってるなぁ、
「
「まぁた辛辣な言葉を。」
後ろから誰かが駆け寄ってくる音がする。
「遅くなってすみません。長宮さん。」
「おぉ。
「それじゃあ行きましょうか…って、何を見てるんですか?二人とも。」
「ジオットですよ。」
「この上下田の始まりであり、上下田がお国に見捨てられた大元凶…か。そのせいでこんな地獄の大地が出来上がっちまった。」
「地獄…?ここがですか?」
「他にどこがあるんだよ。」
「へぇ。でも僕はあんまり気にしませんけどね。ここが地獄かどうかなんて。地獄じゃぁないとは思いますけど………さっ、いきましょ。」
「ここが地獄じゃない…なんて、甘っちょろいこと言いますね、安土さんは。」
「ここにそもそも愛も関心もないんですよ。ただただ縁があってここにいる。それだけです。」
「愛の反対は無関心…か。ハッ。」
今回この三人が目指す場所、それはジオットの「根」と呼ばれる建物の密集地帯の中にある一つのビル。
犯罪組織の「
同時刻に、同じくムーンライトビルに向かう人影がいた。
「所長、どこに向かっているんですか。」
「特に行く当てもないが、あの大きなビルに一直線に進んでいたら、何か発見があるかもしれんと思ってな。」
「…はぁ。」
「お前も何か夢をもって往けよ。
「私に大きな目指すべき目的は、無いので。」
「安土!急ぐぞ!」
「ア、ハイ!」
「おいしそうな店とかなんだとか、発見できるものって色々あると思うんだよ。」
「…………。もう帰りましょうよ。」
バタンッ
「あ、すいません。急いでいて。」
「大丈夫ですよ。けがもしてないし、大したことありません。」
「だいじょうぶですかぁ。長宮さん。」
「大丈夫ですか所長。」
そこで安土文乃と鴨田勝は、目が合ってしまった。
《あ。》
「どうしてお前がこんな所に居るんだよ、探偵ごっこ。」
「そっちこそ。警察ごっこが何こんな辺鄙な所に居るんだよ。」
「何だよ二人、知りあいか?安土。」
「こいつは知りあいでも何でもありませんよ、安心してください。」
「そうです、こいつとはただの腐れ縁です。」
「は?」
その問答を見守っている者がいた。
「根」の各部に用意周到に張り巡らされた監視カメラ。
ムーンライトビル内 センターコントロールルーム。
「どうしますか、兄貴。とうとう嗅ぎつけて来やしたぜ」
「案ずることは無い、ただの野良犬だ。」
「へぇ……じゃぁどのような処遇で。」
「叩き潰せ。」
「合点了解です。」
「あぁ、ブレウ。」
「はい?」
「頼りにしているぞ。」
「了解です!!」
ブレウはビル内の放送設備に手を伸ばした。
「ビル内の戦闘者各員に次ぐ、今このビルは襲撃を受けようとしている。総員以って。」
「叩き潰せぇぇぇぇ!!」
今、すべてが始まろうとしている。この上下田を舞台にした壮大な物語が。二人の主人公たちは、時を跨いで再会した。それが運命の歯車をまくエネルギーになるのか、それとも歯車を止める石になるのか。今、
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